学園都市のバレンタイン
「時々と言うか絶対忘れるけど、ユウ君って結構モテるんだよね」
「ホント。意外と言えるか言えないかが曖昧すぎるから、こういうの見るとどう反応していいのかが良くわからない」
「……何気に酷いな」
場所は屋台通り。
光一の屋台と料理サークルの共有休憩スペースにて、これまでの依頼主“達”からのバレンタインチョコを抱える裕樹に対しての、アスカと宇佐美の感想。
「でもすごいですね。送り主皆、学園都市の各部門上位の名前ばっかりですよ」
「……なっ、なんだか、おしょれ多いれしゅ」
みなもとつぐみが、裕樹の抱えてるチョコレートに付属してるカードの名前を見て、眼を丸くしていた。
「そりゃあ俺は敏腕用心棒だから、そう言う人からの需要高いんだよ」
「ユウやん何気に、一級フラグ建築士の資質あるからねい。まあ立てるフラグは全部、地盤グラグラだけどねい」
付き合いの長い部類に入るクリスの補足に、その場の全員がああ成程と頷いた。
「それじゃ、ボクからもハッピーバレンタイン。はい、ユウ君」
「……上手には出来なかったけど、あたしも」
「ん、サンキュ」
「宇佐美ちゃん、ちゃんと渡せたみたいだね」
所変わって、光一の屋台にて。
「支倉センセもお疲れ様」
「だから恥ずかしいからやめてよ」
料理は苦手な宇佐美の手作りチョコを教えた身として、きちんと渡せた光景を見届けたひばりは、にっこりと笑みを浮かべた。
「で、光一は貰ったのか?」
荷物運びのバイトをやってる龍星が、光一にそう問いかけた。
「一応、月とクリスに貰った……そういや、クリスにも教えたんだよな?」
「大丈夫。ちょっと変な事になりかけはしたけど、ちゃんとしたのにはしたから」
「変な事?」
「……ううん、こっちの話。それより光一君、月さんからはもらったの?」
「ん? ああ、貰ったよ。これ」
そう言って光一は1つの箱を取り出して、ひばりに開いて見せる。
「――意外と、は失礼だけど、普通に美味しそうだね」
「うん。俺も素直にうれしいと思うよ……自分ので型を取ったおっぱいチョコも考えたけど、とか言われなかったら」
――時が止まった
「……すまん、俺もそれにはどう返答したらいいかがわからん」
「いや、それが普通だと思う」
「ふむっ、流石はゆえっちだねい。おねーさんも……」
「勝ち負けを考えるなこういう事で!!」
光一が龍星に謝罪されて、いつの間にか来ていたクリスが妙なやる気に燃えてる間に……
「えっと……」
「歩美ちゃん、歩美ちゃんは歩美ちゃんらしいチョコレートを渡せばいいからね! そうした方が絶対光一君は喜ぶからね!?」
「……なんだか、すごい話があったみたいだね」
「……(ぷしゅ~!)」
話を聞いて躊躇してる歩美に、ひばりが先輩らしくアドバイスをしたり
顔を真っ赤にしながら、みなもとつぐみが混乱してたり
「宇佐美、アスカ、これ今食ってもいいか?」
「良いけど、なんか気味悪いね。ユウがこういう事で空気読むなんて」
「うんうん。明日ミサイルでも降ってきそうだね」
「……お前ら絶対こういう事じゃ、何を言ても俺が怒らないと思ってないか?」




