朝霧兄妹の新家族!?(プロローグ)
学園都市にも、違法を生業とする者は存在する。
DIEシステムの悪用--違法改造を施した電子召喚獣、非人道的な手段を確立させる違法技術。
それらは学園都市の運営上、決して表に出てはならない闇研究ではあるが、体育祭での暴走事件以降それらが急激に増え始めていた。
「……現場及び実行犯は確保、直ちに確保に来られたし、と」
裕樹の仕事は、フリーの雇われ身辺警護だけではない。
時折生徒総会直々に、生徒会では権限上無理な極秘の任務を言い渡されることがあり、最近では体育祭での責任故にDIE違法研究の調査を主に受け持っていた。
余談だがその間は、極秘で裕香には生徒会SP(女性限定)のガードが付く。
「--後は武瑠が来たら、引継ぎしておしまいか」
裕樹もその責任は感じており、基本的に格安で引き受ける事にしている。
「じゃあ裕香達に土産でも買って……」
ガタッ!
「ん?」
学園都市は海岸に面しており、埠頭もあれば会場運搬の為の倉庫の区画もある。
現在裕樹はその倉庫の1つの前に居て、ふと周囲を見回す。
「……あの辺りかな?」
敵意を感じない事から、傍から見れば不用心にしか見えない足取りで、音がした辺りに近付いていく。
そこには裕樹が入れる位の空きドラム缶が置かれた場所で、そのうちの1つに飛び上がって--
「……子供?」
その中に、酷く衰弱している子供を見つけ、裕樹はそこから出してやる。
自身のバイクを置いた場所に連れて行き、普段裕香を入れてるサイドカーに寝かせ、D-phoneを取り出し写真撮影。
「えーっと、身元は……三村葵。へえっ、裕香の1つ下か。捜索願は……」
この機能は、本来保安部限定だが、裕樹は生徒総会からの依頼限定で、ある程度の権限は許されている。
行方不明、迷子等の身元確認のための物で、写真は確認後すぐ消去される。
「……?」
表示された情報を見て、裕樹は表情を変え--アプリを閉じて、通話。
「……月、急患頼めるか? “シラヒメ”みたいに丁寧な処置をお願いしたいんだけど」
『はいはい、じゃあ“コクテイ”みたいに迅速にお願いね」
「了解」
裕樹は通話を切って、即座に履歴を削除し次は……。
「--もしもしみなも、今日迎えに行くつもりだったんだけど、急用が入ったんで」
『大丈夫ですよ、裕香ちゃんも私も最初から泊まる事前提で考えてましたから』
「すまん、頼む」
裕香を預かってるみなもの所に連絡し、次に……。
「遅かったな、武瑠」
「--流石ですね、朝霧殿」
後ろから気配を消して迫る武瑠に声を掛けた。
「--その子は?」
「現場付近で見つけたから、今から病院に連れて行く。データは贈るから、後は頼む」
「了解」
「さて……杞憂で終わればいいんだがな」
--皆覚えてるかなあ。
と、つぶやいてみます




