学園都市最初のトラブル (エピローグ)
「お前たちなんか雇ったのが間違いだった!」
「そんな言い方ないだろ! 俺達もあと一歩で……」
「何があと一歩だ!? かすり傷もなければ息も切れてなかっただろうが!! やっぱり最初の予定通り、妹の方を捕まえた方がよかったじゃないか!!」
「やるなら派手な方がいいと言って、結局は共感しただろうが!!」
「ケンカは後にしろ。さあ来い!」
結局、裕樹を襲撃した面々はあっさり捕まり、龍星達で捕まえた生徒会の展示会を仕切った面々も加え、生徒会SP護送警備隊、通称熱血機動隊に護送されていく。
「……最後まで見苦しい奴等だな。しかも初等部の子供を人質にする気だなんて、堂々と白状するか普通」
「--ホントに。ねえお兄ちゃん、あの人たちどうなるの?」
『生徒会主催イベントの妨害は、通常よりも重罪だからね。襲撃者は重度の懲罰処分、生徒会所属の人たちは生徒会議事堂ビル中の倉庫と便所掃除で、当分外に出られないかな』
「随分と軽い罪だな。いっそ俺が……」
『りゅーくん、私刑禁止の項目に引っかかるからやめてね』
「……第2の椎名九十九を出さないための処置の1つで、必要だとはわかりはするが、こういう時窮屈だな。くっそ」
『……今だけは同感だよ』
それを見送る面々も、あまりいい表情はしていない。
「--んだよ、役に立たねえな」
「せめて朝霧にかすり傷1つでもつけて捕まれよ」
「それがだめなら、妹さらって……」
「ばっか。いくら堕ちた悪魔の妹だからって、それは不味いだろ」
更に言えば、周囲の野次馬(裕樹を嫌う面々が多い)の心無い発言も手伝い、龍星も怒り心頭だった。
芹香も生徒総書記秘書という立場への責任感でこらえてはいるが、内心怒り心頭である。
「あいつら……黙らせてやる!」
「だめだよ綾香、生徒会SPが受け持った事件は、隊長の許可がなきゃ関与できないんだ。そうじゃなかったら、僕がやってるよ」
「くっそ……」
「コラお前たち! 見世物じゃないと何度も言ったはずだ!! さあ、帰った帰った!!」
そこに、護送警備隊長の王牙が怒声を上げて野次馬を怒鳴りつけ、蜘蛛の子を散らすように野次馬達も帰っていった。
さすがに2mを超す強面の巨漢、それも最強の1人と名高い王牙に怒鳴られれば、部下でさえも逃げ出した者が数人いる位の迫力となる。
「まったく……」
「友情も結構だけど、職務と権限を守った上でにしてくれないかい?」
「うっ……これはこれは、天草総会計。なぜこちらに?」
「この展示会は、僕の部下の管轄だからね。不始末を詫びに来たんだ」
『天草総会計』
「やあ、瀬川君。陣頭指揮感謝するよ」
そこへやってきたのは、生徒総会総会計、天草昴
その顔を見たとたん、龍星も綾香も苦虫を噛み潰したような表情に早変わり。
「--なんであいつなんだ」
「……あたし、あいつ苦手なのに」
「そんな事を言われても、ここは僕の部下の管轄だからね--上司として詫びをしない訳にはいかないだろう」
来なくていいのに--というのが、2人の共通の感想だった。
「……此度の事は、僕の監督不行き届きで、本当に申し訳ない」
「--別にいいさ。お前には色々と苦労かけちまってるんだから、これ位」
「そういう訳にもいかないさ--ささやかではあるが、夕食の準備を進める手配はしたから」
「そうか……じゃあみんなで食べてこうか」
裕樹から目を離し、次は裕香に歩み寄って膝をつき、目線を合わせーーー
「あんな技術が開発されていた以上、他の最強がああなっていてもおかしくはなかった。だから僕は、彼1人が責められる様なことじゃないと判断している」
「……あの--ありがとう」
「……意外だな。総会の中じゃ、総副会長の次位に超厳しい合理主義の鬼が」
「--否定できなくはないけど、鬼は言い過ぎだよ綾香」
余談ですけど、昴のイメージはロード・エルメロイ2世で
一目見てイメージと一致したので(眉間のしわと年齢差し引いたうえで)




