学園都市最初のトラブル(3)
警備ロボットの包囲網を潜り抜け、途中ひばりに怒られつつ--
裕樹たちは管制室の近づいていた。
「--もうすぐか」
「このまま、何もなければいいんですけど」
「いや、流石にそれは甘すぎる。重要な地点に何もしない訳……」
突如裕樹が後ろとびをしたと同時に、眼前の曲がり角から鉄パイプが振り下ろされた。
舌打ちして、裕樹の一回りは大柄の筋骨隆々のスキンヘッドの男が姿を現す。
「なかったなやっぱり」
その後ろからも、ぞろぞろといかにもな風体が数人、電子ツールではない本物の鈍器やナイフなどを手に現れた。
「……で、誰だよお前ら?」
「悪魔を屠る聖騎士軍だ」
「「…………」」
その言葉に、裕樹どころかひばりさえも白い目でじっと見ていた。
--特にひばりは、視線を明後日の方向に向けている。
「なんだその眼は!?」
「……悪い事言わねーからさっさと帰れ。なかったことにしてやるから」
「いきなり降伏勧告!? てかそこのガキ! せめて視線をこっちに合わせろ!!」
「見るなよひばり」
「自然にガキ呼ばわりで連想しないでください!!」
などと、ちと空気読めないやり取りを経て--
「--で、あの展示物を作ったのはお前たちか?」
「そうだ」
「なんであんなものを!!」
「なんでって、その“堕ちた悪魔”が最強の一角じゃなく、最悪の暴力だとアピールするために決まってるだろ。生徒総会はどうも危機感が薄いようだからな」
「……ふざけないでください。あれは」
「理由はどうあれ、そいつがいつでもあんな虐殺を起こせる野蛮な悪魔であることは--」
「……はぁっ--くっだらねえ」
心底あきれ果てたという風な溜息に、ひばりや敵側諸共にカチンときた。
「裕樹さん、あんな事言われて--」
「別に呆れはしても、怒れやしないさ--俺が最悪の暴力で堕ちた悪魔だなんて、確かにその通りだ」
「へえっ、自覚して--」
「だとしても、俺を討伐するのはお前らじゃなく北郷達だ。てめー等みてえな腐ったヒーローじゃねえ--やられる相手位自分で決めるさ」
「そんな権利あると思ってんのかよ?」
「--追い詰められてんならまだしも、最初から卑怯に走ってるアホよりはな。そんなじゃ勝っても負けてもろくなことにならねーぜ?」
「この野郎!!」
--20秒後
「……幾らなんでも弱すぎだろ」
「いえ、裕樹さんが強すぎるだけで--」
「違う。それ差し引いても弱すぎる」
死屍累々と、20人はいたはずの襲撃者は全員一撃でのされていた。
「--で、まだやる気か?」
「なめるな!! このザコ供と違って、このベンチプレス120kgの剛わがががががっ!?」
「--北郷の190kgや王牙の200kg超に比べりゃ非力だけど、俺だって140kgは持ち上げられんだ。さて……大人しく自首する?」
「……はい」




