選択肢1.ひばりに目を向けた
「ひばり、楽しんでるか」
「あっ、裕樹さん。これ、おいしいですよ」
ひばりに声を掛けると、裕樹は料理を勧められた。
「ははっ、楽しんでるみたいだな」
「それはもうっ。生徒会専属シェフの料理なんて、めったに食べることが出来ないんですよ」
「1人顔見知りがいるから、後で紹介しようか? きっとひばりといい友達になると思うけど」
「ホントですか!? ありがとうございます」
喜ぶひばりに笑みを浮かべながら、裕樹は1つの包みを取り出した。
クリスマスらしい包装のそれを、ひばりに手渡す。
「メリークリスマス。はい」
「あの、これって……」
「クリスマスプレゼント。裕香が日ごろ世話になってるお礼も込めてな」
手に取った感触と重さから、衣類か何かかな--とひばりはあたりを付けた。
……そこで、ある不安がよぎった。
「……中身って何ですか?」
「開けてみてのお楽しみ」
「--誰かに相談したりしました? 月さんとか」
月が以前、ひばりに誕生日プレゼントで(冗談の名目で)下着を贈ってきた事があったのを思い出した。
それもひばりには到底着ることが出来ない、月好みのデザインの。
「いや、プレゼント何買おうか考えてる時に月に会って、相談したら下着贈る事を勧められたんで、その事を宇佐美に相談したらビンタされて……」
「勧められた時点でおかしい事に気付いて下さい! --月さんも、裕樹さんにその手の冗談が冗談にならないの、わかっててやるから性質悪いよ」
「だから、宇佐美に勧められたものにしたんだよ」
「じゃあ安心ですね--裕樹さん、月さんに何か言われたらまずあたしに相談してください」
「? ああっ、わかった」
一抹の不安を抱えつつ、ひばりは折角なのでプレゼントの包みを開けてみた。
「--エプロン」
「ああっ。初等部用の子供サイズではあるけど……」
「ちっちゃくないよ!」
「でも裕香にも色違いだけど、同じデザインのを贈ったから、それ着て一緒に料理してくれると……」
「つくづく格好つかない人だよ、もう……わかりました。ありがたく受け取ります」
やり取りにこそ呆れはしても、ひばりはエプロンのプレゼント自体は嬉しかった為に--
「えっと……明日、お邪魔してもいいですか?」
「ん? 良いけど、どうした?」
「あたしからのプレゼントは、明日のご飯は任せてくださいって事で」
「おっ、そりゃ最高のプレゼントだな。どうせだし、そのエプロン着てやってくれないかな?」
「ええ、喜んで」




