表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
240/402

学園都市生徒総会総書記秘書 瀬川芹香

 生徒会総会長、井上大和。

 学園都市理事会理事長、井上弥生を祖母に持ち、周囲から将来を期待されている……のだが。

「……えっと次は」

 頬はこけて目は充血し、その下に隈がベットリと存在を主張。

 顔は完全に、来訪した初等部役員全員が泣き出すような顔になっていた。

「……」

 自身の企画した、学園都市全体規模を使った一大イベント。

 それが朝霧裕樹を陣に敵に暴走させられ、最強の力が暴力として使われたら--そんな最悪を表明する結果となってしまった。

 結果胃を壊し、無理を押した仕事を重ね、眠れぬ日々を過ごしていた。

『……大丈夫、ですか?』

「……要件は何だ?」

 すでに余裕など微塵もないのか、苛立ちが表面から溢れるような表情を芹香に向けた。

 芹香が涙目になってるのに気付き、頭痛薬と胃薬の錠剤を急いで飲み込んだ。

「……すまない」

『いえ……あの、少し横になった方が』

「うるさい。今は時間が惜しい、報告じゃないならさっさと……がふがふっ」

 掻き込むようにして錠剤をのみ込み、芹香は現状一緒にいた方が危険と判断し、要件を手渡す

『……えっと、こちら一条総書記からの報告書です』

「そうか……ありがとう。それと、本当にすまな--ぅぅっぷ」

『謝るくらいなら、せめて横になってください』

「仕事が溜まってるんだ。寝る暇も惜しい」



『--以上です』

 そう報告した芹香の表情には、心配と疲労が浮かんでいた。

 勿論宇宙も、仕事の量が増え疲労の色は日に日に濃くなっている。

「すまなかったな、嫌な役割やらせて」

『いえ、それはいいんです。皆大変な時期ですから』

「ただ、わかってやってほしいのは……」

『彼は理事長の孫として、生徒総会長として、責任を果たそうと必死になってるだけ--と言う事なら、理解はしています』

「ならいいんだ--それで、次の仕事だけど」



「--で、次は俺かよ」

『立場としても友人としても、一条総書記にとって朝霧さんは必要な方ですから」

 所変わって、裕樹が入院している病院。

 いまだに右目右腕首と、びっしり包帯がまかれている。

「どうぞ、芹姉ちゃん」

『ありがとう、裕香ちゃん』

 横では裕香がリンゴを剥いていて、芹香に差し出してそれを受け取った。

「……心配はしてたけど、井上はやっぱそうなってんのな」

『焦らないでくださいね』

「焦るなというより、焦れないけどな。これじゃ」

『まだ、痛むんですか?』

「ああっ。走る事も跳ぶ事もままならないだろうし、右腕だってこれじゃ芹香相手にも腕相撲で勝てる自信ない」

 そう言って裕樹は、無事な左手でまだ剥いてないリンゴを手に取り、近くのコップの上で--。

 ぐっと力を籠め、ぐしゃりとリンゴがつぶれた。

『……よほど右腕、痛むんですね』

「ああっ……それ以外もこの通り、すっかり鈍っちまってる」

『……この通りって、どの通りですか』

「いつもならちっと力籠めれば潰れたんだけど、今のは1秒ほどタイムラグがあった」

『……わかりませんよ』

「そう?」

 芯までぐしゃぐしゃにつぶれたリンゴをゴミ箱に投げ捨て、裕樹は手を拭い手製リンゴジュースを啜る。

『それはそれとして、退屈でしょうから差し入れとして、本を一通り見繕って持ってきました』

「おっ、そりゃ助かる……んだけど。なあ芹香、これ一体どういうチョイスだ?」


 “男性が女性に最低限弁えるエチケット”

 “女性の心理解説、女性の喜怒哀楽理解の心得”

 “女性が不快だと感じる男性の言動100戦”


『では時間が押してるので、失礼します』

「……おーい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ