混沌の中で(2)
学園都市生徒会執行部
学園都市の運営を生徒側で担う組織であり、主に学園都市に点在する学園の初等部、中等部、高等部の生徒会により運営されている。
その中でも最高権力と言われているのが、生徒会長、副会長、書記、会計を纏める地位による生徒総会。
「やっほー、おひさしぶりだよん。こすもん」
「……その呼び方やめてくれないかな? 俺の名前は確かに宇宙って書くけど、名前は“そら”って読むんだから」
「……申し訳ありません、一条総書記」
「そんな畏まらなくていいよ、朱羽さん」
その内の1人、生徒会総書記である一条宇宙。
人情家であるその人柄と、妹である一条宇佐美に引けを取らないそのルックスから、一般生徒からの人気が高い穏健派。
個人的な知り合いであるクリスティーナ・ウエストロードと、実家が学園都市に出資している関係から面識のある朱羽南波は、ある案件の為に生徒会に赴いていた。
「それで、用件は……光一の事かな?」
「そだよん。あんなやり方でまーさを引き抜いて、保安部がきちんと機能するとはおもえないねい」
「久遠さんに問題があるとは言いませんが、あんなやり方で組織の長を決めると言うのは」
「それに関しては、監督不行き届きだ。光一にも迷惑をかけた」
「……まあそーらんを攻めに来た訳じゃないけどねい」
「生徒会がこれでは、皆に不安が……」
「所詮はその程度の組織だ」
そこへ割り込む声に、クリスは表情を歪め、南波は少々難色を見せる。
「……久しぶりだねい、びゃくやん」
「……お久しぶりです、大神総副会長」
「久しぶりだな、ウエストロードに朱羽」
肩書こそ生徒総会総副会長であるが、実質的な生徒総会のトップである、学園都市始まって以来の天才と名高い男、大神白夜。
一条宇宙とは対極に位置する強硬派で、“力こそが全て、弱さは罪”と言う思想の元に猛威を振るう、冷酷な現実主義。
先天的な才能とカリスマ、後天的に鍛え抜いたその実力に裏打ちされた立ち振る舞いから、生徒会の中では彼に心酔する者は多く存在する。
「と言うか、相変わらず手厳しいねい。自分も所属している組織だよん?」
「こんな案を出さざるを得ん組織、所属しているこちらが恥ずかしい位だ」
巷では鉄仮面とまで称される程、表情を変える事が滅多にないにも関わらず、心底呆れた様子でそう言った白夜がD-Phoneを取り出し、文書ファイルを開きクリスと南波に突きつけるように見せる。
「緊急対策執行委員会……学園都市の各機関の代表者を選りすぐった上で、この事態および更なる危機を想定した準備の為の機関、ですか」
「……ってこれ、殆ど生徒会の大半の頭越しだよん? 良いのかねい?」
「構わん。権限に甘える為の責任転嫁のやり方、あるいは弱い者いじめしか知らん者に、文句を言われる筋合いはない」
「……ああ。更に言えば、この案件は俺も携わってる」
「珍しいですね? 一条総書記が、こんな強引な案件に賛成するだなんて」
「俺だってこんな強引な手法はとりたくないよ。けどこんな現実逃避こそが最悪の暴力なこの様じゃ、俺だって否定のしようがない」
「そう言う事だ」




