最強の系譜 北郷正輝編
ちと行き詰ったので、気分転換に。
次は凪と王牙、どっち書こうかなと考えてます
「では、お願いします」
保安部長官、北郷正輝。
彼は久方ぶりの休暇に、かつて自分が暮らしていた孤児院へと、たくさんのお菓子や玩具を伴い訪れていた。
「みんな元気にしてるか?」
「あっ、正輝兄ちゃんだ!」
「お土産を持ってきたぞ」
世界の各地には、学園都市が法人を務める孤児院が点在していて、ここはその1つ。
基本的に学園都市に編入するのは、親元を離れるかこういった孤児院を経ての物となる。
正輝は裕福とは一切無縁な環境で、更には暴力的な両親と言う境遇に生まれ、無理心中から逃げる形で路頭に迷っていた所をこの孤児院に拾われた経緯で、学園都市に編入した。
「まーちゃん、お久しぶりね」
「--院長、その呼び方はやめてください」
「私にとっては、いつまでだってまーちゃんよ--そうそう休める訳ではないのに、いつもありがとう」
「最強と呼ばれる程になったというのに……ですが、お変わりないようで何よりです」
「さ、おいで。まーちゃんのために、おにぎり作ってあげるから」
「……お願いですから、その子ども扱いだけはやめてください」
思い出深い場所で、恩人であり育ての親ともいえる初老の女性の、変わらぬ子ども扱いに苦笑する。
そして--
「--また、増えましたね」
「ええ……本来は、こういった施設が賑わうのは好ましくはないのだけど」
学園都市編入を前提としているため、6歳以上の子供は少なくはあるが……。
正輝は傷跡あるいは包帯が目立つ、初めて見る子供が来るたびに多くなっている事に、歯を食いしばる。
さらに言えば傷跡は事故の類の物もあるが、その殆どが殴る蹴るなどの明らかな人為的な傷痕であること、そういった子供は周囲に馴染めず同じ様な子と固まってひっそりとしながら、正輝が持ってきたお菓子や玩具で遊んでいる。
「……」
そういった子供の集まりをみて、正輝は幼少時代を思い出していた。
今でこそ最強の一角、学園都市秩序の要などと呼ばれていても、決して平たんな道のりではなかった。
正輝もその最強の中で唯一の凡人だと自負しており、その現実と向き合い今や一撃必殺と謳われる拳に全てを懸け続けた結果が、今であると考えている。
「……貴方は私の誇りよ、正輝君」
「--? なんですかいきなり--それに正輝君って」
「一度、言ってあげたかったの。ただ、呼び方についてはこれっきりだけど」
「やれやれ……ですが、保安部長官を拝命したとき以上にうれしいです」
正輝は肩をすくめ、周囲に馴染めていない子供の集まりに駆けよっていった。
「……えっと、北郷……先輩?」
「畏まらず、気軽に呼びかたをしなさい--少し、話をしたいんだ。いいかな?」
--余談だが、太助とは学園都市からの付き合いであり、医師志望の彼にはケガの手当てや考え方の一致などを経て親友となった。




