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学園都市の体育祭 Verロイヤルランブル(5)

今回は流血、過激描写があるので

それらを了承したうえでの閲覧をお願いします

「……これは、本当なのですか?」

 光一から転送されたデータを見たその瞬間、蓮華は顔が真っ青になった。

 “外部接続式人工頭脳”

 DIEシステムを介して、外部から接触する形で接続し機能する人工知能。

 主に人形劇などで、それを組み込んだ装飾品を付け、糸なしで操るなど娯楽方面で使われる事が多い、学園都市では割とメジャーな技術の1つ。

 それを人間に使うための実験記録。

「--その実験してたやつと、どうも蓮華ちゃんの所の奴が接触してたって。光一が調査したから、間違いない」

「……おそらく、黛さんの目の届かない末端の人だと思う」

「気遣いは不要です……いずれにせよ、隊長である私の責任であることに何ら変わりはありません」

「とにかく、実行前に何としてでも止めなきゃ。光一の実験記録からの推測だと、人工知能の方に難があって暴走の危険性が高いって」

「最悪の事態は想定しておこう。とにかく、一緒に来てくれ。フリーに俺達より、権力のある蓮華ちゃんの方がまだ説得力は--」

 そこで鷹久は言葉を止め、テレビの方に目を向け--顔を真っ青にさせた。

 映像には、裕樹の姿が--それも、右手に見慣れぬ槍を持ち、左手に意識を失った東野辰美の髪を掴み、引きずっている。

 それよりも目を引いたのが、槍を掴んでいる右腕を起点に、右腕の露になっている部分と首から上の右側は、異様な形で血管がびっしり浮かび上がっている姿で映し出されていた。

 眼帯が辰美とやりあって取れたのか、左目があらわになっていて、まるでオッドアイの様に右目だけが真っ赤に充血していて正気の色は見えない。

「……遅かったか」

「東野さんが……」

「--何ということに」

 3人が驚愕する中で、テレビに朝霧裕樹に挑戦しようと駆け付けた参加者達が--

『ギャアアアアッ!!』

『……がああああっ!!』

 1人残らず、挑戦者ではなく生贄として、断末魔響く虐殺劇が繰り広げられた。



 --一方その頃。

「はっ……はっ……はっ……」

 暴走した朝霧裕樹の虐殺劇--それは、朝霧兄妹の家にも届いていた。

 ようやく兄が写ったと喜ぶ裕香に微笑みつつ、注目していた矢先--直視してしまった。

 唯一、ある意味一番耐性があっただろうアスカが、慌ててテレビの電源を切ったものの--。

「……」

 誰一人として、言葉を発せられなかった。

 先ほどの、チャンピオンが挑戦者と相対する……というようなものではない。

 敗北者の可能性を根絶やしにし、魂にまで深い傷を刻む絶対的暴力--としか言えない光景。

「……裕香ちゃん」

 誰も今起こった事を受け入れられず、呆然とあるいは恐怖におびえる中で、アスカがまず第一に裕香に寄り添い抱きしめた。

「--あっ、ふぅっ……うっ」

「……落ち着いて。今のは悪い夢だから……」

 垣間見た程度とはいえ、兄の変貌に裕香はショックを隠し切れなかった

 いつもなら抱き着き返すにも拘らず、ただアスカになされるがままになっている。

「--どうしたの、ユウ。何があったの?」

 アスカ自身も、裕樹とは初等部からの長い付き合いであるため、垣間見た程度とはいえ涙を流さずにはいられなかった。

 裕樹の変わり果てた姿が、あまりにも受け入れがたかったために。



「……」

 衣服は返り血にまみれ、周囲には倒れ伏している挑戦者たち。

 槍の宝石部分に浮かび上がる眼の文様は、ケラケラと笑うかのように目を上向きにゆがめ、ぶれさせている。

「おっ、おぉっ……おっ--おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 裕樹が突如、背をのけぞらせ、腹の奥底から喉を絞るかのように咆哮した。 

 槍の眼の笑いが止まり、怒ったように下向きにゆがみ、裕樹が体をびくりと痙攣させ、うなだれる

 ゆらりと体勢を立て直すと、ふらふらと足取りが安定しないまま歩き出した。

「ーー大丈夫か、辰美」

「意識を失っとるだけや。心配はいらん」

「周囲も、見た目ほどひどいケガではなさそうだ」

 先ほど放り捨てた辰美のいる方からの声に、ぴたりと裕樹が動きを止めた。

「--見ていて辛いなあ、ユウ兄さんのあないな姿」

「同感だ……我らが盟主、御影凪殿のライバルともあろう者が、こんな変わり果てた姿になる等」

 右目から血の涙が流しながら、裕樹が駆け付けた北丘武瑠とフラウディア・尾崎・ウェストロードと相対する。


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