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学園都市の体育祭 Verロイヤルランブル(2)

「--退屈だ」

 選手控室では、龍星が腐っていた。

 時間経過とともに、新たな参加者を投入するロイヤルランブルという形式上、まず一番人数が多い部隊員レベルからの出発

 龍星はその上のレベルに認定されてるため、控室ごもりだった。

「まあまあ、明後日になれば嫌でも出ることになるんですから、今日は一先ず英気を養いましょうよ」

 同じレベル認定された鷹久が、コーヒーを龍星に差し出してそう告げた。

「それもそうだな……ところで、綾香ちゃんは?」

「綾香は本業じゃないから、部隊員レベル認定ですよ。凪さんとやりあうんだって、張り切ってました」

「鷹久は、誰とやりあいたいんだ? 俺は断然王牙とだが」

「僕は……北郷さんとです。格闘家としての理想、一撃必殺の拳に僕がどれだけ近づけるかが」

 勿論、こういった会話は龍星や鷹久だけがやっているわけではなく……

「俺は、鳴神隊長とだ。学園都市の誇る最強の肉体、一度全力でぶつかりあいたかった」

「私、絶対凪様と! 棒術に目が行きがちだけど、テクニックに関してはほれぼれする」

「一撃必殺の拳……俺がどれだけやりあえるか」

「剣を志すものとしては、やはり朝霧裕樹と剣を交えたい」

 と、それぞれがやりあいたいという相手を上げ、盛り上がっていた。

「……普通に体育祭やるより、盛り上がってるな」

「学園都市に住む誰もが、1度は最強って言葉に憧れますよ。その最強と一戦交えることは、学園都市の住人の夢みたいなものじゃないですか」

「それもそうか。ただ、さすがにタダではなかったのは、甘かったみたいだが」

 そういって目を向けた大画面テレビでは、各所で戦争さながらの光景が映し出されていた。

 これは当日になって初めて発表されたことだが--最強に挑戦する資格は、最低5人は倒したと確認されなければ得られない。

「使う使わないは人それぞれだが、流石にこうしないとロイヤルランブルの意味がないか」

「あっ、早速誰かが……綾香!」



「--最初の挑戦者が来たか」

 御影凪の前に現れたのは……

「おうよ! 最強への挑戦権、あたしが第一号だぜ!」

「……お転婆も結構だが、品性くらいは持った方がいい」

「説教なら後で聞くよ。さ、勝負勝負!」

「--よかろう。言っておくがお嬢さん、先輩は強いぞ」

 袖のないロングコートを翻し、フードを取って顔をあらわにする。

 最強格随一の二枚目と名高い顔は引き締められ、実力に裏打ちされた自信溢れるその佇まいは、綾香を圧倒するには十分だった。

「--流石、最強に数えられるだけあるな。佇まいだけで威圧されるなんて、初めてだぜ」

「逃げたいなら逃げて構わん」

「冗談! 折角のチャンス、誰が捨てるかよ!」

「--生徒会SP身辺警護部隊長、御影凪……参る」



「……流石に、しんどかった」

 もう一方、北郷正樹のもとへは……

「ん? 光じゃないか。ふむっ、挑戦権は持ってきたようだな。よしよし」

「子ども扱いやめてください! 今の私は、挑戦者なんですよ!」

「ああっ、すまなかった……ならば、敵として相対しよう」

 ボキリと拳を慣らし、ギリっと握りしめる。

 元々正樹は威圧感がある男ではあるが、ただそれだけの動作で光の背にぞくっとした悪寒が走った。

「……行きます!」

「来い!」



 --場所は戻って、控室

「出始めたか……思ったより早かったな」

「ですね……あっ、王牙さんだ」

 続いて表示されたのは、鳴神王牙。

 上着を脱ぎ、Tシャツ越しとはいえ鍛え抜かれた肉体を披露していた。

「……とても僕達の1つ違い、いや、10代の体じゃない」

「俺も筋肉には自信はあったが、流石の一言だ……王牙はあれでスピードもあるというからなあ」

「正面衝突であの人が負けるなんて、想像できませんね」

「俺もバーサクモードでもならにゃ、当たり負けするからな--ところでさっきから気になってるんだが、裕樹はどうしたんだろうか?」

「そういえば、さっきから映像に映ってないような……まあ、発信機の反応はあるみたいだから、まだ挑戦者が来てないだけなんでしょうけど」

 龍星も鷹久も、顔を見合わせて首を傾げた。 



 --一方、その裕樹は。

「--とても挑戦、なんて雰囲気じゃねえな」

 大勢の女性に取り囲まれていた。

 全員が武装し、裕樹に対して明確な敵意をあらわにしながら。

「おーい、ホントに挑戦権は……」

「挑戦ではない。処刑だ」

「……やっぱ狙ってきたか。けど、蓮華なしならさして怖くもなんともないけど」



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