芸能学科の憂鬱
今回は、ヒョウガさんから貰った御堂奏です。
うまく出せてるかな?
一条宇佐美は、運動が好きな部類である。
毎日のトレーニングは欠かさないし、体力や運動量等は高い部類に入る為、ダンスの講習では1年ながら芸能学科でも上位の成績を保持している。
「ふぅーっ」
「はっ……はっ……」
「大丈夫? 奏」
「……大丈夫……じゃ、ないよ」
その為、同じ芸能学科でもこなすのが大変なメニューとなっており、宇佐美の中等部からの友人である御堂奏は息を切らせ、ばてていた。
「おいおい、大丈夫?」
「あっ、朝霧先輩……」
「どっかで横にさせるか。よっと」
「ひゃっ!」
同伴していた裕樹が奏をお姫様だっこで抱き上げ、宇佐美が日課の運動メニューを行う自然公園を見回し、休める場所を探す。
「あっ、ああああああああの!!?」
「? どうかした? 顔赤いけど、熱でも……」
「普通お姫様だっこなんてされたら動揺するに決まってるでしょ!!」
宇佐美のツッコミを余所に、裕樹はとりあえず休める場所で奏を降ろして、持ってきたカバンから水とタオルを取り出す。
「というか、なんでお姫様だっこなの!?」
「これが一番妙な事にならない抱え方なんだよ」
「妙なって……ああっ、成程」
何となくだが、事情は察した宇佐美だった。
「……それにしても」
「? どうかした?」
「トレーニング量には自信あったけど、ユウは疲れてる様には見えない」
「いやいや、結構きついからな俺も?」
「それはその上着があるからでしょ!」
裕樹は強いと言うより強過ぎる部類の為、普段はその力をセーブする為に、錘の付いたガチガチに硬い生地を使ったギプス同然の上着をつけている。
少なくとも、宇佐美どころかヘタな保安部員ですら、それを着たら運動どころか日常生活すらキツイ位の。
「……ホント、殆ど反則じゃない」
「いやいや、宇佐美の年齢不相応の胸……成績ほどじゃぶっ!!?」
「気付いた所はよしとするけど、遅い!」
「…………」
奏はその様子を、ぼんやりと眺めていた。
早くから頭角を現し、学園都市でも有名な用心棒を雇ってる宇佐美と違って、自分は生活に困らない物の成績で見れば中堅程度。
すっかり遠い存在になったと思っていた者の……
「くすっ」
「? どうかしたの、奏?」
「なんとなくだけど、中等部の頃を思い出しただけ」
「中等部かあ……ちょっと前だった筈なのに、懐かしいね。2人で歌謡祭のアスカさんに憧れて、2人で芸能学科目指そうって」
「…………」
2人が思い出話を始めたその少し前に、裕樹は少し距離を置いてD-Phoneのゲームアプリを起動し、イヤホンをつけた上でゲームをやっていた。
「……こういう所は、気が利くのね」
「朝霧裕樹さん、かあ……良いなあ。私もあんな強い人に守って貰いたい」
「確かに強いし頼りになるし、ユウと一緒なら安心はするけど、噂通りにデリカシーが全然なくてね。その辺りは結構大変なんだよ」




