甘えん坊日和 (幼馴染IF 過去話2)
「あっ、あいっ、あうっ」
「はーいゆうきゃちゃ~ん、ハイハイじょうじゅでちゅねー」
「……赤ちゃん言葉とカミカミ口調が混ざってるぞ」
初等部寮は、基本的に共同生活となっている。
男子練と女子練とで別れて居るものの、食事は一緒にとってレクリエーションルームで遊ぶなど、決して閉鎖的ではない。
裕樹とみなもは同じ寮に住んでいて、レクリエーションルームで一緒にいることが多い。
そして今は、離れてる間にハイハイを覚えた裕香を伴い、アットホームな雰囲気を醸し出している。
「あっ、そうだ。宿題があったんだった」
「なら裕香見てくれたお礼に、わかんない所があったら教えるよ」(子供の頃から文武両道)
「--いつもしゅみましぇん」
「いいよ別に。どうせ簡単に解けるから」
「--そんなセリフを普通に言えるの、裕樹しゃんだからこそれしゅよ」
「あう~」
みなもが裕樹に裕香を渡すと、D-Phoneを取り出して課題ファイルを展開
そのファイルに、課題データが転送されそれを解いて期限までに送信。
期限を過ぎた場合は送信が出来なくなり、直接の提出という形でしか提出という形になっている。
課題内容は基本的に選択問題となっているが、点数が悪いと送り返され再提出となってしまう。
「おやおや~、何やら見慣れたようで見慣れぬ雰囲気?」
「アスカちゃん」
それに割って入ったのは、みなものルームメイトのアスカ・ホークアイ。
裕樹と同い年にして、既に寮の女子たちの事実上まとめ役をになっている、大器を持つ少女
「その子は?」
「俺の妹」
「へえっ、ユウってこんな年の離れた可愛い妹居たんだ」
「あう~」
「で、みなもちゃんに懐いてると……」
「あい~、えへへ~っ、きゃはっ」
みなもに抱っこされていて、ご機嫌な裕香を見てアスカはにやにやと裕樹に目を向ける。
「可愛いね~。なんだか可愛げのないユウとは大違い」
「ほっとけ」
「ねえねえみなもちゃん、ボクも抱っこしていい?」
「うん、いいよ--裕香ちゃ~ん、アスカちゃんでちゅよ~」
「……赤ちゃん口調が板についてるね」
--時は過ぎ
「……あれからもう9年位になんのか。今思えば俺、かなりのクソガキだったなあ」
その初等部寮の近くを通りかかったとき、ふと裕樹がぽつりと漏らした。
「? どうしたのユウ兄ちゃん」
「ここね、私たちがまだ初等部の時に住んでた寮なんだよ」
「へえっ、ここがそうなんだ」
「ああっ。裕香はまだ赤ん坊だったから覚えてないだろうけど、裕香も一度ここで俺達と一緒に遊んだことあるんだぞ」
「そうなの?」
「うん。裕香ちゃんはハイハイ覚えたばかりでね」
「--で、みなもや俺に抱っこをせがむ……って、今と全然変わってないか」
「ちょっ、ユウ兄ちゃん。それは幾らなんでもひどいよ!」
「ふふっ……」
「あーっ、みなも姉ちゃんまで~!」




