甘えん坊日和(幼馴染IF 過去話)
学園都市総合体育親睦大会。
主に初等部三年以上のスポーツ、格闘技などの志望者を対象に、年上の実力を肌で実感し、向上心と目上への敬意を育む行事である
「うあっ!!?」
--にも拘らず、高等部が初等部に圧倒される光景がいくつかあった。
その内の1つが……
「--おいおい、マジかよ」
「ってあれ、朝霧じゃねえか。高等部でさえ相手にならねえのかよ」
「うわーっ、天才ってやっぱいるもんなんだなー」
朝霧裕樹、初等部3年生。
「……つまんねえな。高等部のお兄さんでもこれって」
現状に対し、周囲の喝采とは裏腹に飽き飽きしている、生意気盛りな男の子。
--その次の日。
「おはよう、ユウ」
「ああっ、宇宙か。おはよう」
一条宇宙、初等部3年生。
「どうだった? 昨日の総合体育親睦大会は」
「退屈だったよ--高等部ならいい刺激や勉強になると思ってたのに、期待外れもいいところだ」
「ユウ、それは先輩に失礼だよ。目上の人には、敬意を払わないと」
「--あの後初等部の分際で生意気だとか言って、数人で待ち伏せしやがる奴に誰が敬意なんて払うかよ。もちろん返り討ちにして、保安部に突き出してやったけど」
「……気持ちはわからなくもないけど、初等部相手に数人って」
「それで、宇宙はどうなんだよ? 生徒会選挙、立候補するんだろ?」
「ああっ……俺、生徒会に入って、色々とやりたいことがあるからさ」
「俺、応援するからな! 俺に出来ることがあるんなら、遠慮なく言ってくれ。絶対に助ける--約束だ」
不満しかなくなり、日々に飽き飽きしている裕樹だが、増長と言えるものはしなかった。
親友である一条宇宙との時間や日々は、裕樹にとって楽しくかけがえのない物であり、彼の助けになりたい気持ちは強かったために。
そんな裕樹の気持ちは宇宙も大切に思っており、裕樹のそんな現状を打破したいと思ってはいるものの……咄嗟にいい案が浮かぶわけもないが。
「……そうだ。せっかくだから新しいことに挑戦してみたらどうかな?」
「新しい事?」
「そう。昨日の総合体育親睦大会じゃ、ユウみたいに高等部を圧倒した初等部が、他にもいたらしい」
「ああっ、聞いてるよ。確か北郷正樹。鳴神王牙、御影凪……」
「聞いた話だけど、彼らは保安部や生徒会SPを志望してるそうだからさ」
「……それ、本当か? 保安部、生徒会SP……よし、決めた!」
現状裕樹にとって、友人と言えるのは一条宇宙と……
「……高等部にきゃっちゃうなんて、しゅごいにゃあ。裕樹さんって」
同郷出身で幼馴染の初等部2年生、カミカミ口調が特徴的な涼宮みなもくらいだった。
昼休み、屋上で2人でいるのはほぼ日課となっている。
「それ、何読んでるの?」
「格闘技講座の案内--剣道はもうやめる」
「……つまらないつまらないって言ってても、好きだから続けてたのに?」
「--昨日の総合体育親睦大会じゃ、俺と同じ年で高等部に勝った奴が他にもいたらしい。剣道をやめるのは、そいつらにライバルとして挑戦する準備の為」
「ライバル……楽しそうでしゅ」
「弱い者いじめでチャンピオンなんてつまらねえよ」
そういう裕樹は、最近の不満だらけの飽き飽きした態度ではなく、夢に活気を持った子供のそれ。
それをみてみなもは、嬉しそうだった。
「--なあみなも、もうすぐ父兄面談だけど」
「うん、お父さんが来るって言ってた--裕樹さんは?」
「母さんが裕香連れてくるってさ」
「裕香ちゃん? --そういえば、もう1歳なんだよね」
「待ち合わせしてるから、一緒に来ない? 裕香もみなもには懐いてるから、喜ぶだろうし」
「いきましゅ」
「あい~、きゃはきゃは~」
「わあっ、裕香ちゃん大きくなったね」
「あう~。うっ、うぅ~」
朝霧裕香、1歳。
以前のレフェルさんの幼馴染設定短編を思い出し、ちと思いついて書きました。
リクエストとして、レフェルさんの方でもよろしければと思います




