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魔導少女エリアル☆裕香 コラボ短編

 レイダー

 他人の力を奪い、それを己が力とする技術を手に、学園都市に反旗を翻した者達。

 願いを食い荒らし、可能性は否定され、人はただ暴力の嵐に飲み込まれる……そんな中!

『……力は奪うものなんかじゃない。受け継ぎ、育てる物--だから私は、守るために戦う!』

 最大最強の電子ツールであるエリアルを手に、兄である朝霧裕樹の力を受け継ぎ、学園都市の脅威に立ち向かう。


 魔導少女エリアル☆裕香



『ギャアアアアッ!!』

 黒い霧のような何かに包まれた電子召喚獣、マリス。

 屋台通りを襲ってきたそれらは、所々を斬り落とされ消滅していく。

「--受け継ぐ意思が真の力。皆の可能性、エリアルを手に守ります。魔導少女エリアル☆裕香、ここに参上!」

 友人が(ほぼ強制的に)決めた決め台詞を、(これも強制的に)決めポーズを決めての宣言。

 周囲が沸いて、レイダー兵が歯ぎしりしながら睨みつける。

「このクソガキ!!」

 激昂したレイダー兵が、裕香めがけて駆け出しーー

「うあっ!!?」

 レイダー兵の足が電子ツールの銃で撃たれ

「オトナシクシロ!!」

「くそっ、離しやがれ!!」

 バーサクモードを展開した、龍星に拘束された。

 レイダー兵の中には、バーサクモードでなければ取り押さえることが出来ない者が出てきたための措置である。

「ありがと、光一兄ちゃんにりゅー兄ちゃん」

「いや、礼はこっちだ--さすがにマリス相手はきついから、裕香ちゃんが来てくれて助かった」

「大型は裕樹でもなければ打倒は無理だ。しかし、こうも裕樹の力を使いこなすとは……流石に兄妹か」

 そこへつぐみとみなもが駆け付けて……

「あっ、つぐみ姉ちゃんにみなも姉ちゃん。うん大丈ぷっ!?」

「幾ら裕樹先輩の力を使えるって言っても、心配になるよぉ……」

「心配かけてごめんね。でも大丈夫だから」

「とにかく、ケガがなくてよかったよ」

 みなもは心底心配そうに裕香を抱きしめ、つぐみもその後ろでハラハラしながらそう告げた。



「……心配は今のところはなし、か」

 その様子を、人目につかない場所から見ていた者がいることに、気づかないまま。

「随分とウチの妹を気にかけてんじゃねえの」

 最も、その当人ーー東城太助も、その後ろから近づくものがいることに気付かないまま。

「そりゃあ、力あげた責任あるからね。それと幼女絡みで責めるなら、ユキナ絡みだけにしてくれないかな?」

「……なんか常識的にまずい経緯でもありそうだが、それは置いとくとして。なぜ初等部の、それも本来戦う力を持たない裕香を選んだのか、そろそろ聞かせてもらいたいんだが」

「……現実的な理由としては、エリアルが技術的な都合で初等部のD-Phoneじゃないと保存が出来なかったから。その上であの子を選んだのは、僕がエリアルを作った本分を果たしつつエリアルを使いこなせると思ったから」

「本分?」

「僕の調べた限り、レイダーを手にした人間は例外なくその力に取り憑かれてる……その力の本来の持ち主ですらない、奪い取っただけの略奪者の操り人形に過ぎない事を自覚もせずにね」

 裕香達を襲い、自分を捕まえようとしたレイダー兵の姿を思い出し……裕樹はうなずいた。

「--だけど、ただ捻じ伏せるだけじゃ何も変わらない。こちらも例外なく、程度の差こそあれど努力が実らず埋もれ続けていた経緯がある--だから!

 太助には珍しい大声だったため、裕樹はぎょっと目を見開いた。

「示さなければならないんだ……本来あるべき姿をね」

「それを、裕香なら成せると? ……一体何をさせたいんだ?」

「何もしなくていい。僕がそもそも君の妹を選んだのは、あの子の善性と成長が周囲に受け入れられ、祝福されているからだ--これこそがまさに、成長がもたらす理想の姿と言えるほどに」

 少なくとも、少し離れた地点でのやりとりはそれを証明するのに十分。

 そして何より、裕樹もそれは誰よりも理解している自信があったため、口は挟まない。

「命の尊さ、文明の発展、そして勝利……それらが正しいのは、祝福出来る事だからだ。利益、名声、権利……そんな自分だけのための物で何かを守ることなど、出来はしないんだ!」

「……普段は俺と同じ現実主義っぽい奴だとは思ってたが、結構理想に熱い奴だったんだな」

「理想は現実に具現する物なんだよ! それを成しえて、初めて人は成長が出来る--少々熱くなってしまったか」

「いや……お前、冴えない風貌さえなかったら、生徒総会に入ってたんじゃないかって思ったぞ」

「とにかくまあ、そういう事だから--とりあえず安心はしたから、通してくれない?」

「……別にお前の捕縛依頼は受けてないけど、体裁的に見逃すことは出来ないから適当に話し合わせてくれ」

「わかった」




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