未知なる地からの来訪者(4)
「親戚の子、ですか?」
「そう。ちと事情があって、学園都市の編入を考えてるらしくて、俺たちが案内することになった」
特級重要事項規定により、午前は朝霧兄妹の家にて思い思いに過ごし--
午前授業が終わった後の就業時間となり、裕樹たちは屋台通りを訪れていた。
「--言われてみれば、確かになんだか裕香ちゃんに似てますね」
「だってさ、ゆーちゃん」
「わぷっ。ちょっ、やめてよ~!」
つぐみにそう言われ、ご機嫌さを隠そうともせず裕理は裕香に抱き着いた。
外でそういう事を嫌がる性質の裕香は、もがいて抵抗するも2歳年上のハグから逃げれていない。
「……まるで妹離れで来てない姉と、反抗期な妹の姉妹みたい」
つぐみがそう呟くと、裕樹と宇佐美、みなもが乾いた笑いを浮かべた。
「しかし……」
「--? 裕樹先輩、どうしたんですか?」
「いや……」
「昼から、屋台通りいくの?」
「ああっ。宇宙の許可は取ったから、昼メシ食ったらすぐ行こう」
「すぐって、良いのユウ?」
「他はともかく、あそこの住民に紹介するのを躊躇すると、逆に怪しまれる。心配しなくても、宇宙にはちゃんと報告して許可もらってる」
「屋台通りって、このころからあるんだ」
「--未来の学園都市にもあるのかよ」
「うん。それより楽しみだな、つぐみおばさんに若いみなもおばさんにも会えるんだ」
「--事情に聞かされた宇佐美はともかく、頼むから本人の前でおばさんなんて呼ぶなよ」
「はーい」
「……ところで、なんでつぐみに若いを付けなかったんだ?」
「だってつぐみおばさんって、ママが昔から見た目全然変わってないって」
「「…………ウソ」」
「……マジで? --正真正銘、永遠のちびっ子ってことかよ」
「……せめて永遠の美少女って呼びなさいよ、ユウ」
「……何でもない」
「……今何かものすごく失礼なことを考えたでしょう?」
「--考えてない考えてない。考えたとしても、今日もつぐみは小さいってことくらい?」
「今の間は何ですか!? それに十分失礼ですよ!」
つぐみに詰め寄られている裕樹を放っておいて、宇佐美は未来の親子に歩み寄る。
「はいはい、裕理ちゃんもそろそろね」
「はーい」
「それにしても……よく似てるね」
そこへみなもも歩み寄って、裕香たちと視線を合わせるようにしゃがみ込む。
「初めまして、私……」
「あっ、みなも……さん」
「? 私、名前言ったかな?」
「え? えーっと……」
「昨日アルバム見せたんだよ。特に裕香はみなもに懐いてるからね」
危うくボロが出たのを、つぐみから逃げて来た裕樹がフォローを入れる。
屋台通りの面々とは割とそういう記念撮影をすることもある為、みなももそれでと頷いた。
「さ、挨拶」
「えっと……初めまして、朝霧裕理です。ボクのことは、裕理って呼んでください」
「わかったよ、裕理ちゃん」
「雨宮つぐみです。じゃあ御近付きのしるしに、クッキーあげるからちょっと待ってて」
「ありがとうございます……助かったよ、ユウ兄ちゃん」
「……気にすんなって。まあ仕方ない部分だってあるからさ。この後光一んところに差し入れ持ってくから」
「先生の所だね」
「……まさか光一の教え子になるとはねえ」




