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未知なる地からの来訪者(3)

「……」

 場所は、朝霧兄妹の家。

 時分はすでに夜遅くとなっており、裕香は裕理は一緒の部屋で寝ている。

「何見てるの?」

「アルバム」

「アルバム? へえっ、見せて見せて」

 日課のトレーニングの後、風呂から上がった宇佐美が裕樹の隣に座ってD-phoneをのぞき込む。

 そこには、今より少し幼い裕樹と裕香が、学園都市編入式の看板をバックに映っている。

「わあっ、裕香ちゃんかわいい。ユウもなんか、今とは随分と雰囲気違うね」

「裕香が学園都市に編入されたときにね。宇佐美もあるだろ、こういうの」

「うん--でもどうしたの?」

「……裕理を見て、ちと昔が懐かしくなったんだよ」

「ふふっ……別に今から裕香ちゃんがお嫁に行くわけでもないのに」

「いつかはそうなるだろ……まさか、思ったより早く裕理産んだのには驚いたけど」

「……そうだね。35歳で12歳の子持ちなんて」

 余談だが、そのことを聞いた時には宇宙も含め、盛大にその場が驚いたという。

 宇佐美と裕樹曰く、あんなに驚いた宇宙(兄さん)を見たのは初めてだった。

「……けど、いい子に育ってるみたいじゃない」

「……そうだな」

 そういって、裕樹は立ち上がって冷蔵庫で何かを探し始めた。

 持ってきたのは、ノンアルコールのシャンメリーとグラス2つ。

「それって……」

「さっき前祝いだって、宇宙にもらった--結構高いやつらしい」

「……兄さんまで」

「妹を持つ身としてさ」

 そういって、裕樹は宇佐美の分のシャンメリーを注ぐ。

「……確か、光一が今帰る為の何かをしてるんだよね」

「早くても一週間……だってさ」

「そう……その間、どうするの?」

「しばらく俺達の親戚の子で、学園都市に編入するための見学措置ってことにする」

「途中編入準備って事?」

「そっ。さすがに初等部編入は、総会長の猛反対があったからダメだけど」

「総会長? ……あんまりいい評判聞かないけど」

「……悪い奴じゃないんだ。ただ、あいつ井上弥生理事長の孫だって事を強く受け止めすぎてて、余裕が全然ないってだけ。本当は生徒総会の誰よりも責任感が強い奴なんだよ」

 学園都市の編入は、一般家庭からの編入

 あるいは、捨て子や身寄りのなくなった子供を引き取る措置を経てのものとなる。

 前者の場合は初期入学、後者は途中編入が多い。

「大丈夫かな? ユウの身内ってだけでも注目集めそうなのに」 

「……耳が痛いな」

「え? ……ああっ、ごめん。別に、そういう意味で言ったんじゃ」

「いや、いいよ……自覚はしてる事だから」

 そういって、裕樹は宇佐美にグラスを差し出した。

 宇佐美もそれ以上は何も言えず、そのままグラスを受け取る

「……ユウってさ」

「ん?」

「強くて賢くて頼りになって、欠点なんてセクハラ以外てんで見つからない完璧超人(笑)だけど」

「……褒めるか貶すか、どっちかにしてくれないか?」

「裕香ちゃん絡みじゃ、面白いくらいに不安とかそういう、人間的な部分があらわになるね」

「……兄なんて、例外を除けば大概はそんなもんだよ。もちろん宇宙だって……これ内緒だけど、宇佐美のこと常に気にかけてんだぜ」

「……兄さん」

「だから宇佐美は、ドーンと構えてればいいのさ。大丈夫宇佐美って、見た目よりも重いんだから」


 バチーーン!!


「はい、もう黙って……カンパーイ!」

「……カンパーイ--時々俺いらないんじゃないかって思えてくる」

「黙ってって言ったでしょ? それにユウがいなきゃ、あたしが安心して仕事に専念できないんだから」

「へーへー」

「信じてるからね」

「……ああ」

「……明日はどうする? 裕香ちゃんはあたしにとっても妹みたいなものだから、協力は惜しまないよ」

「屋台通りに連れてくよ。設定上不自然にならないように、つぐみにみなも、龍星のダンナに紹介しとく」

「龍星さんなら、芹香さんから……」

「特級重要事項は、芹香みたいな総会の側近って立場でも知らされないんだ。悪いけど、宇佐美からは裕理の身元については話さないでくれない?」

「わかった」

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