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学園都市でのプールでのひと時(2)

「ふぅっ……」

 遊泳ではない、本格的な競技用のプールで、クロールでの往復を終えた宇佐美はざばっとプールから上がる。

「水泳上手なんだな、宇佐美ちゃん」

『ホント、いつ見ても羨ましい」」

「はい、あたしもともと運動が大好きで、スポーツは全般得意なんですよ」

 プールサイドに控えていた龍星が、宇佐美にタオルを手渡した。

 ケガした龍星に気兼ねしてしまう為、芹香も同伴したうえで

「すみません、わがままに付き合ってもらっちゃって」

「構わんさ。裕樹からけが人の俺に代わっては、心許ないだろうが」

「いえ、セクハラ発言がない分プラスですよ」

「裕樹相手じゃ仕方がないとはいえ、全然うれしくないぞそれは」

『あっ、あははっ……」

「さて、思い切り泳いだことだし……遊びましょう」

 そういって宇佐美は、合流を提案した。

「結構タフなんだな。宇佐美ちゃん」

「歌って踊るの、結構大変なんですよ。特にライブとか、注目浴びる場所になるともう」

「……流石は一条の妹だ」

 龍星も宇佐美のライブは見たことはあるが、ライブの時の宇佐美は堂々としていて、とても緊張や動揺という概念があるようには見えなかった。。

 そういう話を聞いて、宇宙の生徒会での振る舞いを知ってる龍星は、宇佐美もやはり宇宙の妹なんだなと龍星は納得するように頷いた


 --所変わって。

「ぶわっぷ、やったなこの!」

「きゃははははっ、綾香姉ちゃんすっとらーいく!」

 裕香でも膝が浸かる程度の、浅いプールにて。

 綾香と裕香が元気よく水の掛け合いをやっていて、周囲はそれをのんびりと傍観。

「えっと……」

「うん、最初はみんなでやってたんだけど……あの2人白熱しちゃって」

「ついていけずリタイアれしゅ」

 宇佐美たちの到着に気付いた鷹久が、苦笑しながら説明。

 周囲は確かに、くたびれたという雰囲気の面々がいて、妙に納得させられていた。

「あっ、宇佐美ねえちゃぶっ!?」

「隙ありだぞ裕香」

「やったな綾香姉ちゃん!」

「ぶわっ、この」


 ピーンポーンパーンポーン!


『ご来場のお客様、本日は……』


「おーい、時間だってよ」

「はーっ、はーっ、やるなあ裕香。さすがは朝霧裕樹の妹だぜ」

「ふふーん。体力じゃ綾香姉ちゃんには負けるけど、元気なら負けないよ」

「おっ、言うじゃねえか。元気ならあたしも……」

「はいはいそろそろそこまで。というか恥ずかしくなるからやめて」

 本気で小学生と張り合う幼馴染兼従姉兼彼女を、鷹久はなだめ始める。

「ところで、光一君。今日やるイベントって一体何なの?」

「ああっ、えーっと……」

 つぐみに促され、光一はD-phoneを取り出した。

 学園都市では生活必需品を通り越した要である為、破損防止処置は基本措置となっている。

「なんでも、水上サバイバルゲームの新機軸……電子召喚獣技術を応用して開発した、討滅戦だってさ」

「討滅戦って……」

「正確に言えば、チーム組んで大型の電子召喚獣相手のサバイバルゲームって感じ」

 なぜ裕樹が呼ばれたのかが、全員に理解できた。

 余談だが裕樹は、たった1人で大型電子召喚獣相手に勝つことができる位に強い。

「それはまた随分とど派手なイベントだな」

『……そうだね。でも、注目が集まるのもわかるよ』

「まさか朝霧裕樹の大型電子召喚獣討伐が見られるなんて、久しぶりだぜ」

「僕もだよ。正直真似ができるとは全然思わないけど」

「……私は、テレビで見たことがあるくらいだよ」

「……つぐみちゃんもですか? 私もれしゅ」

「あたしは、以前あるよ……ちょっと無茶しちゃって、助けてもらったときに」

 と、それぞれが意見を交わしあう中……

「まあなんにせよ、陽炎財閥だからこその最大級イベント、見逃す手はないねい。あちしも実は、ユウやんの大立ち振る舞いを見るのは久しぶりだよん」

「? クリス先輩は、ユウの活躍見たことあるんですか?」

「見たことあるよん。なにせおねーさん、ユウやんのお得意様の一人だったからねい。ユウやんに守られて、お姫様抱っこされて、その時おっぱ……いい思い出だねい」

「……言葉濁したつもりなんだろうが、バレバレだからな?」

 ーー余談だが、その場全員が間違いなく事故だと理解はしていた。

「そういえば、昔のティナ姉ちゃんはよくユウ兄ちゃん怒ってたよね」

「怒ってた?」

「そういえば、そだったねい。あの頃はおねーさんも純粋無垢な美少女で、ユウやんのセクハラ発言によく乙女の怒りをぶつけてたものだよん」

「……今からじゃとても想像できませんね」

「おっ、見えてき……うおっ!」

 そろそろイベントの場につこうというところで、どうやらターゲットの電子召喚獣が展開されたらしくーー

 20mはあろうかという、大ダコが姿を現した。


「おーっ、こりゃすげえな」

 一方、それを見上げるプールの上にて。

 足場としては少々心許ない、ビート板を大きくした足場を踏みしめながら、裕樹は眼前の大タコを見上げる。

 短パンTシャツとラフな格好だが、手には電子ツールの刀二本を握り締め、裕樹は舌なめずり。

「さて……やるか」

 表情を引き締めた裕樹の眼前には、タコ足が迫っていた。

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