学園都市のプールでのひと時(1)
「すごいね。スライダーに流れるプール、それに水上サバイバルゲーム場だなんて」
「流石は陽炎財閥、金をかけているのがよくわかる」
「そりゃ学園都市は、大企業のイベント企画実験場の側面もあるから」
入り口前でのオープンセレモニーが終わり、いざ開場。
光一に鷹久は水着に着替え、龍星は首と左手のギプスがある為に、せめて恰好だけでもと短パンとアロハシャツを着ている。
……割と鍛えられた肉体の鷹久と龍星の横で、パーカーを羽織ってる光一は居心地悪そうに周囲を見回している。
「おっ、来た来た」
と、光一の視線の先には……。
「お待たせー」
赤いワンピース水着を着た裕香が、浮き輪片手に駆けてきた。
「じゃーん、どう? 宇佐美姉ちゃんに選んでもらった水着だよ」
「へえっ、宇佐美に? センスいいじゃん」
「成程、よく似合ってるぞ」
「うん、かわいいよ裕香ちゃん」
「えへへ」
照れるようにご機嫌になる裕香に続いて……
「流石に宇佐美ちゃん、スタイル抜群れしゅ」
「……ほんと、羨ましいなあ」
「……とても後輩とは思えないよ」
白のビキニに、赤いパレオを巻いたみなも。
水色のワンピースの上に、Tシャツを着たつぐみと、同じくTシャツを緑のワンピースの上に着たひばり。
その三人の注目を浴びて、年齢不相応の均整の取れた身体を空色のセパレート水着で包む宇佐美は、少し躊躇していた。
「ちょっ、ちょっとみなさん、そんなじろじろ見ないでください」
「いいじゃねーのそれ位。あたしもスタイルには自信あったけど、宇佐美にゃかなわねーもんな」
『みんな、それ位にしとこうよ』
「……言いたい事はわかるけど」
『あの、宇佐美ちゃん? なんで私を見て言うの?』
宇佐美には劣るものの、オレンジのビキニでわがままボディを包む綾香は、ケラケラと笑う。
その後ろで、肩に風丸を乗せて黒のビキニを着た芹香は、苦笑している。
「……ユウじゃねえけど、すげえ光景だ」」
「……確かになんか言いそう」
「……俺は目に浮かんだ」
「こーいっちゃーーん」
「え? ぶわっ!?」
その後ろから、光一に抱き着いてきたのは、クリスティーナ・ウェストロード。
黄色のビキニを着た彼女は、水着姿を(触覚的な)アピールするように光一に抱き着いた。
「わおっ、ティナ姉ちゃん大胆」
「裕香ちゃん、見ちゃダメれしゅ」
「そうだよ。もうクリス、光一君、裕香ちゃんの教育に悪いからやめて!」
「いや、なんで俺まで!?」
みなもが慌てて裕香を目隠しし、ひばりが腰に手を当てて2人を怒り、光一は納得いかないと抗議する。
「それにしても……」
「綾香、何気に無視してない?」
鷹久のツッコミを無視して、綾香は周囲を見回し、女性客の多さに目を見張った。
そして耳を澄ませ……
「本当に朝霧裕樹が来てたんだね」
「ここの新アトラクションの実演やるそうだけど、どんなのかな?」
「私はそれより、朝霧先輩の活躍が楽しみです」
その殆どが裕樹目当てだということを確認。
「これみーんなユウさん目当てかよ」
「常々忘れさせられるが、裕樹のやつ女性人気高いんだな」
『失礼だよりゅーくん……否定はできないけど』
「あの人がすごくてかっこいいのは、事実だからね。“黙ってさえいれば”だけど」
鷹久の何気に酷いセリフに、裕香を除く全員が同時に頷いた。
「あーっ、また朝霧さんにお姫様抱っこで助けてもらえたらなあ」
「そういえば以前、違法召喚獣に襲われかけたところを助けてもらったんだっけ?」
「うん。すごくたくましくてね」
「……どんだけなんだろ?」
つぐみの呟きに、ほぼ全員が頷いた。
「でも天然セクハラが玉に瑕で有名な人でもあるんだよね?」
「大丈夫。私結構えむ……我慢強いから」
「……今エムって言おうとしなかった?」
「気のせい気のせい。ほら、行こう」
「……何も聞こえなかった。そうだよな、皆?」
「ねえ光一兄ちゃん、エムって?」
「知らんでいい。というか、お願いだから知ろうとしないで頼むから」
「……こういっちゃん必死だよん」




