学園都市のプールでのひと時(プロローグ)
「夏のアミューズメント?」
『そう、そのオープンセレモニーに、参加して欲しい』
学園都市屋台通りにて。
宇佐美と裕香を伴い、光一作成のかき氷で涼んでいた裕樹たちへの来訪者、陽炎詠はあるパンフレットをD-phoneに表示して、そう告げた
余談だが涼んでるのは裕樹と宇佐美で、裕香はつぐみとみなもの手伝いをしていた。
「というか、一財閥のご令嬢が態々訪ねてこなくても、呼びつけてくれたってよかったのに」
『最近は自宅学習とアトリエの往復しかしてないから、久しぶりに妾も羽を伸ばしたかった』
「ふーん」
『それにここの活気は、たまに作品の参考になるから嫌いじゃない』
「お嬢様も、色々と大変なんですね」
『……』
宇佐美が会話に混じろうとすると、わかりやすく詠が不機嫌になった。
主に宇佐美の胸元に目を向けて。
「そう敵視するなよ。大体どうみたって平地と山脈……」
ゴスっ!!
バチーーンッ!!
「ーーで、そのオープンセレモニーで、俺は何すればいい?」
『もちろん妾の護衛と、新しい水上アトラクションの実演』
頬のビンタ跡をさすり、踏まれた足を振るいながら裕樹が聴くと、詠はそう答えた。
「実演って、今からか?」
『女の子をおんぶしながらの火事の30階建てビル大脱出劇を成し遂げたユウなら、簡単でしょ?」
「ああっ、そういえばそんな事もあったな」
「……そういえばって、全然思い出話で済ませていいレベルじゃないんだけど」
余談だが、裕樹にはそういうエピソードが、女性絡み限定で結構ある。
「で、オープンセレモニーなんだけど……」
『わかってる。裕香ちゃんは勿論、ちゃんと招待状は用意してある……不本意だけど、そこのも』
「そこのもって、酷いですよさすがに……まあいっか。それじゃ着る水着は、裕香ちゃんや先輩達と買いに行こうかな」
「さて、じゃあ俺は光一と……龍星のダンナはどうするかな? まあダンナなら、荷物番くらいでも頼めばやってくれるだろうし……」
『……報酬については、こっち。それと食事はこちらで用意する』
「ん、了解」
そういって詠は、後ろのほうに控えていた陽炎SPの面々を引き連れ、帰っていった。
「あっ、雨宮先輩、涼宮先輩、裕香ちゃん、ちょっといいですか?」
「……さて、と」
宇佐美がつぐみたちに声をかけに行った一方で、裕樹は腰かけていたベンチの背もたれに手を置き、反動もつけずにふわっと背もたれで倒立し、ぶんっと音を立てて身体を翻して着地する。
「詠お嬢さんに恥はかかせられないし、気張っていこうかね」




