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学園都市のクーデター(6)

 芹香救出……というより、龍星のもとに送り届けられ、担ぎ込まれた病院にて。

『……大丈夫、りゅーくん』

「ああっ、大丈夫だこれくらい」

 そういった龍星の左腕と首にはギプス、そして頭と腕に包帯を巻いた姿のため、あまり説得力はなかった。

「芹こそ、何かされたってことはないだろうな?」

『うん。私より先に東城さんが捕まってて、それで助けてくれたから』

「東城か……協力じゃなくて、捕まってたって?」

『うん。牢屋みたいなところに入れられてて、全身ぼろぼろにされてた」

「だったら間違いないか……しかし、どうやって脱出したんだ?」

『それが……信じられないかもしれないけど、ちゃんと聞いてね?』

「俺が芹を信じられなかったら、それだけでおしまいだ」

『りゅーくん』


「……言ってて恥ずかしくないんだろうか?」

「というか、こんな所でなんて話してんだか」

「でも、いいなあ。私もあんな風に言ってくれる彼氏がほしい」

「とても美女と野獣の組み合わせには見えん」

「……朝霧裕樹と言い、強いやつってのは女絡みで妙な感覚持ってんのかね?」

 余談だが、2人が会話してるのは病院のエントランス付近の待合場で、注目を浴びていたことは言うまでもない。

「おーいダンナ! 芹香!」

「お兄ちゃん、芹ちゃん!」

 そこへ声をかけたのは、朝霧祐樹と雨宮つぐみ。

 裕樹に付き添われて、つぐみは龍星の有様を見たとたんに血相を変えて駆け寄る。

「大丈夫!? すごいケガだよ!?」

「大丈夫だ、見た目ほどひどくないからそんなあわてなくていい」

 龍星が膝をつき、目線を合わせてなだめるようにそう言って、右手でつぐみの頭を撫でてやる

「芹香も、無事で何よりだったよ」

『心配かけて、ごめんなさい』

「いや、無事な姿が見れて安心した……宇宙に連絡は?」

『今からです。りゅーくんがご覧の通りなので』

 龍星の有様……主に首と左手のギプスに目を向け、一瞬だけ裕樹は表情を変えた。

 裕樹はD-phoneを取り出し、操作して……

「芹香、つぐみ。それじゃダンナのこと任せた」

「裕樹先輩?」

「ダンナは、とっとと家帰って休んでろよ。宇宙には俺が報告しとくからさ」

「おい裕……ああ、わかった」

 裕樹の雰囲気に何も言えず、龍星はそのままつぐみと芹香に促されるままに帰路についた。

 それを見送って、裕樹はD-phoneを取り出し……。

「おっ、入ってる入ってる」

 メールに芹香からの返信メールが入っていて、それを開くと風丸に記録されていた移動記録が表示された。

 電子召喚獣には、マスターが事故か何かにあった際の緊急機能として、媒体となるD-Phoneの位置を記録、探知する機能が備わっている。

 この移動記録はプライバシーに該当するため、緊急事態時を除いてマスター以外に引き出すことは不可能となっている。

「ああもしもし昴? ああ、ダンナは家に帰らせるようにしといた……うん、もらったから、今から調査に行くよ」


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