学園都市のクーデター(4)
「……成程ね」
芹香は風丸を通じ、現在の学園都市の状況を説明。
太助はどうもクーデター勃発時より前から捕まっていたらしく、寝耳に水という雰囲気が芹香には見て取れた。
『……りゅーくんも、違法召喚獣のレベルから、東城さんが絡んでるんじゃないかって」
「そりゃそうさ……捕まったのは、新しい構造の確認テスト時だったからね。隠ぺいもできなかった」
『……道理で』
「もちろん、自分からデータ渡しやしてないさ」
『……でしょうね』
少なくとも、目の前の人物の状況は多大な功労者という扱いには到底見えないだけに、太助の言い分には納得はした。
「けど、大方は僕の予想通りだったようだね……新機軸ではあっても、所詮はまだ試作段階。効率的にまだ以前のバージョンには劣る」
『……あれで』
「だから、追い詰められて僕の拷問がひどくなるのはわかってたし……何らかの手段に走るとは思ってたけど」
よっこらしょっと言わんばかりの動作で立ち上がり、太助は……
バキッ!!
『っ!!?』
まるで紙を紙を破り捨てるかのように、金属製の鎖を錠をひきはがした。
「流石に人質は看過は出来ないからね……予定とはちょっと違うけど、仕方がない」
驚愕を隠し切れない芹香を放って起き、太助は鍵のかかった重厚な金属製のドアに手をかけ、こちらも紙か何かを破るように引きちぎった。
その姿に、芹香はある男……自身の思い人の姿が重なって見えた。
そして、太助がもともとその想い人の担当医だったことと、彼がDIEシステムの医療運用を手掛けていたことを思い出し……。
『東城さん、もしかして……』
「話はあとで……ここから絶対に出ないでね。できれば、あまり見せたくないから」
そういって、芹香を置いて怒声を交えた足音が近づいてくる外へ。
そのあと芹香が認識したもの……それは
「うっ、うわああああああああああっ!!」
外へ出て行った太助の影が肥大化し、人ならざる者の形に変化していく光景。
そして……
「ひいっっ!? やっ、やめぎゃああああああああっ!」
悲鳴と断末魔。
『……りゅーくん』
……芹香はその声に、フラッシュバックのようなものを感じ、耳をふさいで縮こまってしまった。
耳越しでも伝わってくる断末魔が、早く終わってほしい……そう願いながら。
「……もしもし、予想外の事態発生につき、計画を直ちに実行することを決定する。それと九十九に、その間は榊龍星の足止めをするよう頼んで……いいさ。彼ならそれくらいの覚悟、あるだろうからね」
--一方
「さて……」
生徒会議事堂ビルを出て、龍星はまず芹香を連れ去ったと思わしき執行部員の足跡を調べることに。
「いや、そのまま帰ってもらおうか」
それと同時に、割って入る声ーーその声を聴いたと同時に、臨戦態勢に。
体格的には、龍星には体躯で劣るものの、その醸し出す怒りとも憎悪とも表現できないその威圧感は、龍星さえ恐怖を覚えた。
その威圧感を放つ中で特徴的なのが、異様なまでに血走っている目。
最悪の保安部員と評された男、椎名九十九
「……何の用だ? 俺は今は東城に」
「その東城からの命令だ。どんな手段を使ってもいいから、お前を動けなくしろとな」
「じゃあその命令の理由を……キカセテモラオウカ?」
榊龍星、バーサクモード展開
その発動を目の当たりにした九十九は、龍星にも迫力で勝る勢いの形相となり、目はより血走ったものになる。
「……いきなりバーサクモード、とやらか」
「オマエアイテニヨウシャハセン!」




