学園都市のクーデター(2)
ズズゥ~ンッ!!
10mは超える体躯を持つ、恐竜型の違法召喚獣が背中から倒れこんだ。
首から上が、まるで桁外れに長い剣で一刀したかのような、見事な切り口を残してなくなった様相で。
「--ふぅっ」
その違法召喚獣の肩に突き刺していた2本の大刀を引き抜き、朝霧裕樹が現界出来なくなり分解していく違法召喚獣から飛び降りた。
「……相変わらず、桁外れの実力見せてくれるな」
「いやいやダンナ、これでも結構きつかったんだぜ」
「普通はきつかったで、しかも電子召喚獣なしで出来る事じゃないからな!?」
虎型電子召喚獣、煌炎に跨り駆け寄った龍星は、裕樹の発言に突っ込みを入れる
--その背後から。
『グルアアアアアっ!!』
「っ! 裕樹、後ろだ!
ジャガー型の違法召喚獣が飛び掛った。
裕樹が振り返りもせず、バク中を披露しジャガーの背に跨った。
その手には刀の電子ツールが握られていて、それをジャガーの喉にあて……。
『ギィイィイイッ!!?」
ジャガーが現界出来なくなり、消え去っていった。
「あーっ、今のはびっくりした」
「嘘つけ! ……しかし、お前確か84kgなのに、随分と身軽だな?」
「絞ればもっと早くなるけど、俺はボディガードがメインだし、たまに依頼主をお姫様抱っこしたりせがまれたりする事あるから、あんま絞るときついんだよ」
「ーーお前にとっては非常時の常套手段かもしれんが、普通はそんな事したりせがまれたりすることはありえんからな?」
「そうかな? でもダンナだってお姫様抱っこじゃなくても、芹香やつぐみに似たような事してるだろ?」
「……こいつ女絡みだとどうしてこう、認識と言うか常識と言うか、おかしなものになるんだろうか?」
そう軽口をたたきあい、龍星と裕樹は周囲を見回す。
「さて……生徒会はどうなってんだろ?」
「お前、一条から連絡来てないのか?」
「来るわけないだろ。今一番多忙なのは生徒総会なんだから、俺に連絡する時間があるわけないさ」
「それもそうか」
龍星がD-Phoneを取り出し、芹香に連絡を取り始める。
--が。
「--?」
「どうした?」
「……連絡がとれない」
「何……?」
--ところ変わって。
「--上手くいったのか?」
「ああっ。一条総書記の秘書さんは、お優しい事で有名だからなあ。密偵の手引き通り、困ったフリして頼みごとしてみれば、このとおりよ」
『……離してください。私を、元の場所に返してください」
「すぐ返してやるさ。一条総書記はお優しいから、お嬢さんを見捨てるより俺たちのお願いを聞いてくれる事は間違いない」
『--卑怯者!』
「……口の利き方には気をつけろよ? お嬢さんが痛めつけられた姿を見て、一条総書記がどれだけ悲しむかわからんわけじゃないだろ?」
『……」
「そうそう、黙ってればすべては丸く収まるんだ。ここでおとなしくしてろよ?」
クーデターを起こした派閥の隠れ家にて。
芹香は誘拐され、その隠れ家に用意された地下牢獄にとらわれの身となっていた。
電子ロックではない、クラシックな造りの牢獄に放り込まれ、芹香は自らを抱きしめるようにし座り込む。
D-Phoneをとられていないため、風丸が一緒ではあるが連絡は取れない。
『……一条さん、ごめんなさい。りゅーくん、ごめんなさい』
「……うっ……あれ? お客さんかい?」
『--誰?」
「その声……ああっ、榊さんの」
『--!?』
芹香は聞き覚えのある声に振り向きーー絶句した。
ひん剥かれた上半身は、どこかしこが青あざだらけのひどい有様となっていて、顔も右半分が腫れ上がったと言う、いかにも拷問を受けた様相の男
東城太助が、壁に鎖でつながれていたために。
「ーーまずは、見苦しい格好なのを謝るよ……それで無礼ついでに、出来れば君が捕まるまでの外の様子聞かせてくれないかな? ーーえっと」
『ーー私は瀬川芹香です』
「じゃあ瀬川さんって呼ぶね……それで、外の様子はどうだったかな?」




