甘えん坊日和(食卓)
「……すみません、ごはんの支度出来てなくて」
「いや、良いよ別に」
時分は夕暮れ。
ソファーには、そこ座るみなもにべったりとしがみつき、スースーと寝息を立ててる裕香という構図
帰ってきた裕樹がそれを目の当たりにし、苦笑しながら対面式キッチンで卵をかき混ぜ、チキンライスを炒めている
「といっても、俺は料理じゃ野菜炒めとか以外じゃ、オムライスしか出来ないけど」
「裕香ちゃんの好物ですね? 私も良く作ってあげてました」
「つっても料理は苦手だし、裕香のと比べると形も味も悪いから、所詮は作れる止まりだけど」
そういった裕樹の手際は、みなもの目から見て手際が良いとはいえなかった。
それに加え、みなもも以前裕香のお手製オムライスを食べた時を思い出し、裕樹がそういうのも無理もないとも思っていた。
「でも、練習はしてたんですよね? それだけは良くわかります」
「……まあな。妹の好きな食べ物くらい、買ってやるより作ってやりたかったから」
「期待してますよ」
「そう言って貰えるとうれしいけど、結構プレッシャー……っとと」
意識が離れて手が止まったことを思い出し、裕樹はあわてて調理の手を動かした。
「……そういえば、裕樹さんが慌ててる所って始めて見たなあ」
「んにゅ~……」
「裕香ちゃん、目が覚めたらユウ兄ちゃんのオムライスが待ってるからね?」
胸に顔を埋め、体を預けるような体勢で寝てる裕香が身動ぎをすると、みなもは背と頭を撫でてやる
数分後
「んっ……」
「あっ、起きた?」
「……おはよ、みなも姉ちゃん……あれ? えっと、今何時?」
「もう帰ってきてるよ」
「あっ、ユウ兄ちゃん!? ごめん、すぐにごはん……あっ」
目を覚まし、もう外が暗くなってる事に気づいた裕香が、裕樹が帰ってる事に気づいてあわてて起き上がる。
その裕樹はというと、テーブルに3人分のオムライスを並べていた。
「ごめんユウ兄ちゃん」
「そんな事良いから、冷める前に食べるぞ」
「うん!」
裕香が降りて、みなももそれに続くようにテーブルについて、オムライスを1口。
「うん、おいしい!」
「ホント、おいしいです」
「ーーそりゃ良かった」




