甘えん坊日和(過去物語?)
「……意外だ」
「なにが、れしゅか?」
「いや……みなもが、こんな大胆な行動に出ることに」
今日も今日とて、みなもは朝霧家に訪問
裕香は友達とお出かけで、現在は裕樹と二人きりで……今現在ソファーベッドにて、裕樹を押し倒すような形で抱きついていた。
「わちゃしりゃっひぇちゃまにひゃ」
「言葉になってないぞ?」
「……私だって、思い切った事の1つ位しましゅ」
深呼吸しても顔が赤いままのみなもを見て、裕樹は苦笑しながら裕香にやるようにみなもの背と頭に手を沿え、優しくなでてやる。
それに対してみなもは、裕香がたまにやってもらってるなあと思い出しながら、こんな気分なんだなあと撫でられるままに浸るも……。
「……というか、裕樹しゃんが動じなしゃすぎです」
あまりにも裕樹が動じなさ過ぎる事に、みなもは若干不満だった。
「いや、動じてないってわけじゃないぞ? ……こういう事は今まで何回かあったけど、一番緊張してるというか」
「……そう言う所全然直りませんね?」
裕樹の一言で空気が完全に壊れ、みなもの先程までの緊張や動揺で真っ赤な表情は一転し、呆れと軽蔑の表情に変わっていた。
「え? ……なんか、変な事言ったかな?」
「……もういつもの事だから気にはしませんけど。裕樹さん、もしかして私以外の人とこんな事したんですか?」
「え? えっと…………ああっ、そういう事か。どうやら、不安にさせるような事言った(?)みたいだな。ごめんごめん」
「……間が長すぎます。それに疑問形にしないでください」
「心配しなくたって、嫌気はあっても色気なんかなかったよ」
嫌気……という所で、みなもは首をかしげた。
上目遣いで裕樹を見上げると、その時を思い出してるのか本当に嫌気を醸し出す表情をしていた。
「ーーどういう事かの説明くらいはしてもらえます?」
「そういう事してきた女共は、俺を使って暴力の勝者になりたかっただけだから」
「……え?」
「俺が、学園都市でも相対できる奴が限られてる位に強いのは知ってるだろ?」
みなもは無言、かつ即座に頷いた。
「まあ勿論、最初からそこまで強かったわけじゃなかったよ。ただ、北郷より、凪より、王牙よりーー俺が一番最初に、突出した強さを手に入れた」
それからは、やる事なす事がまるで違った。
負ける事、失敗する事がなくなり、依頼主からは感謝され、褒め称えられ、信頼されてはいた……が、それは一般的なそれとは全く違っていて。
「だから依頼主には身辺警護なんかじゃなくて、暴力どころか弱い者いじめとさえ呼べない物を望むのもいたって事」
「まさかと思いますけど……」
「やってねえよ。寧ろあの3人が頭角を現すその時まで、手応えどころか嫌悪感しか沸かない日々に、飽き飽きしてた位なんだから」
「……強いというのも、考え物なんでしゅね」
「"強い”じゃなくて"強すぎる”だ……何か話すにしても聞くにしても、嫌な話しちまったな」」
「……変なこと聞いて、ごめんなさい」
「……」
裕樹が無言でみなもの頭に添えていた手で、そっとみなもの耳を自身の左胸ーー心臓に当てる。
「--心臓の音が聞こえます。なんだか随分と早いですね?」
「……最初からこうしとけばよかった」
「ちょっと、安心しました。内心どきどきだったんですね?」
「そういう事ーーもういっそ寝ちまうか?」
「そうですね」




