甘えん坊日和(お泊り)
「……気持ちいいにゃ~♪」
「裕香ちゃん、動いちゃ駄目だよ。危ないから」
本日みなもは、朝霧家にてお泊り。
食事も終え、裕香と一緒に風呂に入り、3人で買い物に行ったときに買ったお揃いのパジャマ(裕香とみなもだけ)を着て、現在はみなもが裕香に耳掃除。
実は結構前からやってることのため、2人してその所作は板についていた。
「しあわせ~♪」
「可愛いなあ」
みなもに膝枕と、綿棒で耳掃除をしてもらう裕香は、蕩けた様な声を出す。
顔は逆方向を向いててわからなかったが、みなもには今裕香がどんな表情を浮かべてるかが目に浮かんでいた。
「はい、反対の耳もね」
「はーい」
もぞもぞと体勢を入れ替えた裕香は、みなもの想像通りの蕩けた顔だった。
「~♪」
「ホント、可愛いなあ」
「……というか、板についてないかなんか?」
「……いつから居たんれしゅか?」
「いや、今だけど」
黒いスウェットを着て、タオルを左目を隠すようなほっかむりの裕樹が、コーラを飲んでいた
「……1.5リットルの一気飲み、やめてもらえます?」
「……そんなに変かな? 風呂上りのコーラは最高なんだけど」
「いえ、飲むことが悪いんじゃなくて、飲み方と飲む量が……というか、よく炭酸の一気飲みできましゅね?」
「いやいや、この喉を通るときの刺激がたまらなくて……まあそういうなら、控えるか」
しぶしぶといった感じで、裕樹は飲み終わったペットボトルを捨てて、カップを2つとってアイスココアを作り始める。
「はい、終わったよ」
「ありがとみなも姉ちゃん♪ --っと、ココアありがとユウ兄ちゃん」
「ありがとうございます」
耳掃除を終わったころに、裕樹から裕香とみなもがココアを受け取った。
「ん~、耳掃除すると心地いい」
「その様子じゃ、預かってもらってるときにもしょっちゅうだったんだな?」
「うん。みなも姉ちゃんに耳掃除してもらうの、気持ちいいんだもん。ユウ兄ちゃんも……」
「やらんからな?」
みなもに耳掃除してもらう自分を想像して、裕樹は即座に拒否した。
主に気恥ずかしさと……
「やっ、やりゃ……にゃい、んりぇしゅきゃ?」
「……怖くなるから、無理して乗らなくて良い」
顔が真っ赤になり、普段以上のかみかみ口調にガチガチな動作のみなもに、裕樹の直感が警報をガンガンに鳴らしていたが故に。
「じゃあ膝枕くらいは良いでしょ? みなも姉ちゃんの膝枕、心地良いよ?」
「……遠慮する」
そういって裕樹は逃げる様に、ほっかむりしているタオルでガシガシと頭を乱暴に拭いて、普段つけてるレザーの眼帯をつけた。
ふと、みなもは裕樹がバイクに乗るとき以外で左目を露にしている所は、この家の中ですら見た事がないのを思い出す。、
「……裕樹さん、その左目失明してるわけじゃないんでしゅよね? どうして家の中でまで眼帯を?」
「ん? ーーああっ、これ? いや、この傷自体は大した事ないんだよ。ただ……裕香がこの傷見て大泣きしたもんだから」
「そうだったんですか? ……あの、ごめんなさい」
「いや、良いよ別に」
裕樹はそう言ったものの、裕香のほうはその時を思い出し、カップを置いてみなもに抱きついた。
顔を隠すようにみなもの胸に顔をうめて、そのままぎゅっと力を入れて抱きしめる。
「ーー裕香ちゃんごめんね、嫌な事思い出させちゃって」
「違うよおっ。今思い出すと恥ずかしいんだから……」
「まあそういうことだから、極力隠すようにしてんだよ。さすがに」
「……みなも姉ちゃん、今日はこのまま寝るからね?」
「ーーしょうがないなあ」




