甘えん坊日和(外出)
学園都市の交通は、初等部が路面電車に通学バス、中等部が自転車、教員の車。
そしてメインとして、高等部から教習が授業として取り扱われる、バイクや原付が交通の要となる。
「みなも姉ちゃんは取らなかったの?」
「原付の講習は受けたんれしゅけど……」
「大丈夫だった? 怪我とかは……」
「……裕樹さん、まだ何も言ってましぇんよ?」
バイクおよび原付の講習は、学園都市では授業の1つとして認可されている。
そのため、高等部以上の学生は“例外”はあれど原付の免許は持っている。
「裕樹さんは、やっぱり……」
「うん。初等部のころから憧れだったから、受講は真っ先にとった」
みなもには裕樹が、アクション映画さながらのバイクテクニックを披露する姿が、目に浮かぶようだった。
「私も免許ほしかったれしゅ」
「それなら、何の問題もないぞ。サイドカーつければ良いだけなんだから」
バイクが主流の学園都市では、着脱式サイドカーは通常の備え付けとして扱われていて、着脱もショップに行けばすぐにできる
「まあバイクのことなんて、持ってなきゃわかんないか」
「そういう事を言いたいんじゃないんですけど……まあ良いれしゅ。それで」
「私はサイドカーに乗るから、みなも姉ちゃんは後部座席でユウ兄ちゃんにね?」
「あれ? 意外だな。サイドカーでみなもと一緒に、とか言い出すかと思ったけど」
「それは危ないよ。それに……恥ずかしいよ」
「その格好じゃ、説得力ないぞ?」
余談だが今は裕樹たちの部屋で、裕香はみなもに抱っこしてもらっている。
「--外じゃ恥ずかしいの」
「よくわからん拘りだな」
「まあ良いじゃないですかもう。確かに外では困りますけど、私は裕香ちゃんに甘えられるの、好きですよ」
「みなも姉ちゃん大好き~♪」
「うん、私も大好き……でも痛いから、もうちょっと優しくね?」
うれしそうにみなもの胸元に顔を埋めて、ぐりぐりと擦り付ける。
それが流石に痛いらしく、みなもは優しく裕香の背をなでつつも、顔は引きつっていた。
「さて……そうと決まったら、どっか行く?」
「そうですね……もうすぐ春だから、裕香ちゃんの服を見立ててあげるのも」
「服だったら、私もみなも姉ちゃんの服を見立ててあげたい」
「じゃあお願いするね?」
「うん!」
そんなやり取りをみて、裕樹はふっと笑みを浮かべてーー
「じゃあ早速つけてもらってくる」
「え? 何も今からでなくても……」
「善は急げだよ。まあすぐ終わるし、明日でも今でも大して変わらない」
「じゃあ夕食作って待ってますね」
「わかった。じゃあ帰ったら、連絡入れるから」
「わかりました。裕香ちゃん」
「うん、一緒につくろうね。ユウ兄ちゃん、行ってらっしゃい」
「いい子にしてるんだぞーーって、なんか親子みたいなやり取りだな」




