屋台通りの監査
『――では、確かに受け取りました』
「では、一条総書記によろしくお伝えください」
屋台通りも商売を行う都合上、監査が入る。
主に食方面の広報を担う関係上、その監査は一条宇宙総書記の管轄となり、彼の秘書である瀬川芹香が赴いていた。
「しかし、なんでまた総書記付きの秘書さん直々に?」
『ちょっと、別の案件でごたごたしてて、人出が足りなくなっちゃったから。でもこれからすぐ、別の仕事に出なきゃいけなくて』
「スケジュールに突っ込んだのかよ」
『後、宇佐美ちゃんの事も一目見ておきたかったから……』
ちらりと光一から目をそらして、宇佐美がいる方――主に裕樹の頬のビンタ痕を見て。
『……いつも通りだって、良くわかって安心したよ』
「今どこ見て言ったのかを問い詰めたいが――ダンナが聞きたい事あるって顔してるぞ?』
裕樹の言う通り、龍星は芹香を――正確には付き人を見て、面白くない顔をしていた。
『どうしたの、龍君?』
「――立場上、SPがつくのは仕方がないが……なんで凪なんだ?」
生徒会SP身辺警護部隊長、御影凪が付き添っている事。
生徒会SP最高戦力の双璧を担う彼の付き添いは、安心と言う意味では生徒会SPが用意できる最高級の待遇であるが――
生徒総会総書記の秘書と言えど、生徒総会メンバー以外を警護すると言う事は、滅多にない。
「心配する様な事は何もありません」
「そう言う事を聞いてるんじゃ……」
「心配する様な事は何もありません」
『キーっ!!』
話せない――言外にそう言われているも同然だった。
納得はいかなかったが、無理に問い詰めて責任を問われるのは芹香である以上、それ以上は踏み込めない。
何より、凪相手に立場でも力量でも腕ずくは通用しない。
「――わかった。芹香の身の安全は頼むぞ?」
「お任せを」
「やっぱり最強の1人となると、あのお任せをって言葉の重みが違うなあ」
「――それ、俺への不満ととるけど良いか?」
「別に仕事面で、不満は全然ないよ。安心して仕事に専念出来るの、ユウのおかげだって感謝はしてるんだから」
「ならドーンと構え解け。宇佐美は見た目に寄らず結構重いから……」
バチーーンっ!!
「そう言う所が不満なの!」




