甘えん坊日和(事件その2)
所は、みなもの作品が飾られてるスペース。
「――付き合ってる事は知ってましたけど、まさか朝霧裕樹さんに会えるとは」
「そんな固くならなくて良いよ。友達の彼氏に会ったってだけなんだから」
「……こうして見ると、裕樹さんって有名人なんだね」
「うん、進級した時に新しく友達になった子って、私がユウ兄ちゃんの妹だって知ったら皆すごく驚いてたもん……それより、結構大きい美術館だね?」
そう言って、裕香は周囲を見回した。
“学園都市で学べない事、取得できない資格はない”
そう言われてる様に、絵画だけじゃなくて彫刻や織物、写真にガラス細工、陶器に宝石と言った方面の作品も展示されており、勿論作風も近代やクラシック、和風と言った様々なジャンルによって分けられている。
『優秀な作品だから、ここに並べられる――だから1人の作品が幾つも飾られる事なんて、ここじゃ珍しくない』
「はい……だからホントは、たった1枚で喜んでる場合じゃ」
『――そんな事無い。良い作品を描いた事自体は、喜ぶ事』
「……ありがとう、ございます」
美術館らしくカメラ禁止の為、記者陣は入り口でストップ。
詠は裕樹と一緒ならと、SPを周囲の警護に回してしまった為、今は裕樹達と一緒に来ている。
――みなもの胸元が視線に入ると、機嫌が悪くなるおまけつきで。
「でもよかったの? 詠姉ちゃんも一緒って」
『良いの。開会セレモニーはまだ時間があるから、良かったら皆見て行って』
「うん、ありがとう」
「――裕香ちゃん、詠さんとも仲が良いんですね?」
「そりゃあね。ただ詠の方は、最近身長が追いつかれてるのを気にしぶっ!?」
裕樹の顔面に傘が投げつけられた。
『――ちょっとそこの貴女』
「ひゃっ、ひゃい!?」
『間違いなく重々承知で付き合ってるのはわかるけど、コイツの女関連のダメさは筋金(純金100%)いりだから、気をつけなさいよ?』
「……はい、そこはもう重々承知してましゅ」
『――だったら良い』
「てか、何気に酷い会話してんなおい」
「今のは裕樹さんが悪いですよ」
「……何がどう悪いのか全然わからん」
「そこは全く期待してませんからいいです」
「……つくづく良い女だよ、みなもは」
ハッキリと満面の笑顔でそう言うみなもに、裕樹はその笑顔に何も言えず、顔を背けた。
「……♪」
「えっと、裕香ちゃん……って呼んでいい? いつもあんな?」
「そうだよ。仲良しで嬉しい♪」
『――ああもしもし? パパ達が朝霧裕樹に用意してたお見合い写真、早急に全部処分して――え? 理由なんて、彼女が出来たからに決まって――うるさい黙ってやれ。パパ達が文句をつけたら、妾の名前を出しなさい』




