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甘えん坊日和(事件)

ちょっと今回は事件短編にします。


 学園都市第1総合美術館

 学園都市の美術館は、主に美術系学生の優秀な作品を展示する為の場であり、その第1美術館に作品を展示する事は、美術系学生にとっての憧れであり目標である。

 そして今日――

「――夢みたいれしゅ」

 涼宮みなもは、ある風景画で担当講師の総合美術館展示の推薦をもらい、見事に展示枠を獲得――展示日である今日、仲のいい美術科学生の友人と一緒に、第一総合美術館の前に立っていた。

「ほら、早く見に行こうよ。涼宮さんの作品展示」

「でっ、でみょまぢゃ、心の準備ぎゃっ!」

「――やっぱり入り口でしり込みしてら」

「みなも姉ちゃんらしいね」

 動揺していた所に、聞きなれた声。

 みなもが恐る恐る振り返ると、そこには――

「ゆっ、裕樹しゃんに、裕香ちゃん!? どっ、どうしてここに?」

「どうしてって、愛する彼女が美術科憧れの場に作品展示するって聞いたから、こうして兄妹で祝いに来たんだよ」

「おめでとう、みなも姉ちゃん」

 そう言って、朝霧兄妹はみなもに花束を手渡し、みなももどぎまぎしながらも受け取る。

 友人はそんなみなもを微笑ましく見守りつつ……。

「あれ? あの、朝霧先輩? その、もう1つの花束は?」

「ん? ああっ、用事はそれだけじゃないからね」

 そう言って裕樹が指さした先には“陽炎詠新作展”と書かれたプレート。

「……第一総合で個展って」

「陽炎財閥はお得意様だから、こういう挨拶はしなきゃね。まあまずは、みなもの作品展示を見てから――」

 と話していると、記者学生たちとSPに囲まれながら、美術館を目指す少女。

 漆黒のゴシックロリータドレスにヘッドドレス、そしてフリルをあしらった日傘にツギハギだらけのウサギのぬいぐるみを持った、陽炎詠その人。

「うわーっ、記者に囲まれてのご登場って」

「流石、住む世界が違いましゅ」

「丁度良いや。ちょっと待ってて?」

 そう言って、裕樹がその一団に、そして詠に近づくと、その一団にどよっとざわめきが生じ――記者陣が一斉に裕樹が詠に花束を手渡す場の写真を撮り始めた。

「よっ、個展の開会おめでとう」

『ありがとう。態々見に来てくれたなんて、嬉しいわ。裕香ちゃんも――』

 裕香の姿を見つけると、その手を繋いでるみなもの姿を見て――詠は眼を見開いた。

「ひぇっ!!?」

「? どうしたの、みなも姉ちゃん?」

「いっ、今……何か、胸元に突き刺さる様な冷たい何かを」

「?」

 

『……』

「どした?」

『裕香ちゃんがあれだけ懐いてるって事は……』

「? ――ああっ、みなもの事なら後で話すよ」

『――とんだ物好きも居た物ね』

「――何気に酷いなおい」


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