Nightmare Dive(番外編)
学園都市生徒総会
水鏡グループ所有居住ビルの占拠ともあり、事態は生徒総会の判断が必要なレベル。
「――東城め、よりにもよってなんて事を!」
生徒総会長、井上大和はバンと机に手をついた。
「――うるさい、そして落ちつけ井上。お前が騒いだところで、事態は変わりはせん」
「では瀬川さん。向こうからの要求は何か、どういう動きがあるのかを説明してください」
「身代金、あるいは物品の要求をしてくるとは思えないけど……準備はしておいた方が良いかもしれないかな?」
事情を芹香から聞いてる宇宙以外は、総副会長、大神白夜に執行部長、岩崎賢二。
そして総会計、天草昴は落ちついて芹香の報告を待っている。
『まず、水鏡グループの被害状況ですが、SP部隊は椎名九十九の手によりほぼ全員が重症と言う壊滅状態。警備システムは全て、東城太助に乗っ取られた状態で、重傷を負ったSPは……』
「――そんな事は良い! 水鏡怜奈嬢はどうなっている!!?」
その言葉を聞いて芹香は表情をしかめたが、芹香はあくまで一条総書記の秘書で会って生徒総会の一員と言う訳ではなく、この場に対する発言権はない。
「総会長、そんな事はないでしょう。確かに水鏡グループ総帥令嬢の身柄が心配なのはわかりますけど、人身被害をそんな事なんて」
「一条、お前は事の重大さを――」
「ならまずは、落ちついて話をする事から始めて貰えないか? ――ここは公の場ではないとはいえ、生徒総会の会議だ。そんな発言は許されて良い物じゃないだろう?」
「くっ……わかった。すまなかったな、瀬川。頭に血が上っていた」
『いえ……続いて、水鏡怜奈嬢の現状ですが、主に彼女の身の回りの世話の担当学生を人質に取られ、自室で鮫島剛に監視されながら監禁されている状態です――人質は、椎名九十九に監視されており』
「――椎名九十九は、その行いを公にする事その物が危険と判断された狂人……て出しすれば、ですか」
これは東城太助により言い含められたウソである。
水鏡怜奈は、学園都市の内外に置いて非常に影響力の強い重要人物である為、現在の状況を知られる事があってはならない。
「人質を取られ、安全の保証を条件に降伏――か」
「確かに、水鏡嬢ならあり得ない話じゃない……けどね」
ただ、大神白夜、天草昴はウソだと見抜いている事が、芹香にも見て取れた。
――しかし2人はその事を追求どころか、何も言おうとしない。
「それで――要求はあったんですか?」
『はい、岩崎執行部長。今の所は、朝霧裕樹を連れてこい――と言う事だけで』
「朝霧……彼が応じたのですか?」
『それは間違いありません。りゅーく……榊龍星さんが、彼が応じたのを確認してます』
「……ならば、様子見しかあるまい」
それを聞いていた大神が、そう告げた。
「なっ! 大神!!」
「朝霧がいて事態が動かないと言う事は、それ相応の事がある――そう言う事だろう」
「そうだね――いくら水鏡グループに遺恨があるとはいえ、彼がそれを理由にだなんて考えにくい。彼が動かないとなれば、僕達がヘタに動けばそれだけでも危険になる」
「僕も同意見です。今はヘタに事を荒立てるより――ですね。潜入している榊さんとは連絡をとり難いでしょうし、お2人に任せるほかないでしょう」
「榊さんと朝霧が、人質の安全を無視するとも思えない――それで良いか?
「……」
総会長だけがぶぜんとしたままで、舌打ちをして頷いた。
現在は既に保安部が動き、ビル周辺を取り囲んでいて、生徒総会からの指示待ちの間の現状維持となっている。
そこで生徒総会は解散し、芹香は宇宙と共にその場を後にし――総書記執務室へ
「……ふぅっ」
『お疲れ様です――どうぞ』
「……ありがとう」
『――大丈夫でしょうか?』
「大丈夫さ――大神や天草は間違いなく、水鏡怜奈嬢に何かがあったと気付いてるだろうが、その事を責める様な事はしない……多分東城にユウが呼ばれた理由も、察してる」
『……だから、何も言わなかったんでしょうか?』
「だろうな――さて、もう一仕事だ」
『はい!』




