朝霧裕樹と東野辰美の剣戟(1)
今回はGAUさんの四神、東野辰美です
思ったよりしっくりきた2人ですね。
それに考えてみれば、デリカシーが致命的な裕樹と、女らしさに無縁な辰美って、何気にうまくいきそうですし。
朝霧裕樹とガチンコ勝負が出来る者は、保安部でも2人しかいない。
まず、保安部の最高責任者にして最強の男、北郷正輝と、保安部随一の防御力を持つ部隊長、中原大輔。
最も大輔の場合は、防御に徹すればの話であって、総合では敵わないのが現状。
「……相変わらずすごいね」
見学に来ていた宇佐美は、裕樹の足もとで死屍累々と横たわる保安部員達を見て、感嘆の声を挙げる。
何せ裕樹が相手にしているのは、保安部でも最も危険な現場の前線に立って、自分達の防壁となるべく奮闘している、学園都市の機動部隊員。
チンピラどころか、動物園の大脱走が起こったとしても、間違いなく対処ができる精鋭であり、弱い訳がない。
「――やっぱ数だけじゃだめだな。おい、辰美はいないか!?」
「はーい!」
裕樹の呼びかけに応え、1人の焦げ茶色の長い髪をポニーテールにした、茶色い大きな瞳の童顔が特徴的な、引き締まった容姿の少女が名乗り出た。
護身術道場を開き、そこで師範を務めている少女、東屋辰美。
「相手してくれないか? やっぱ剣じゃ、お前くらいしかやり甲斐がない」
「仕方ないですよ。ユウさんの場合は強過ぎますから――まあボクも、本気を出せる相手とやりあえるのは、良い刺激ですよ」
辰美は古流剣術――それも、無穹一刀流と言う抜刀術の流派の免許皆伝の腕前ではあるが、その流派は殺人剣であり、それ故に滅多に振るわない
しかし、眼の前で腰に6本の刀、背に2本の大刀を具現する朝霧裕樹――彼と剣を交える事に関しては、話は別だった。
裕樹はまず、背の2本の大刀を抜いて、辰美と対峙する。
「言っとくけど、手は抜かんからな」
「そんな事しませんし、させませんよ」
「結構!」
左の大刀を担ぐ形にして裕樹は距離を詰め、右の大刀を振りおろす。
流石に裕樹との力比べでは勝てない辰美が、バックステップでそれを回避し、振るった剣を翻して、ブン回す様にもう一度追撃し振り下ろす。
「とても片手で扱ってる大刀とは思えないよ」
回転の勢いがつき、先ほど以上の威力と速度で振り下ろされたそれを、辰美が裕樹の右側に入るように回避して、無防備になったのを狙い抜刀。
「甘い!」
するも、振り下ろした剣の勢いを無理やり横なぎにし、体を回転させるように左の大刀で辰美の剣戟を受け止め、その次の瞬間に受け止めた大刀を手放し、回転の勢いを止める事無く、最初に振り下ろした大刀を辰美めがけて振るうが、辰美が咄嗟にかがんで前転する様に回避。
受け止めた大刀が地面に落ちると、辰美は距離を取って裕樹はその大等を拾い上げる。
「……大刀相手で苦戦するなんて初めてだよ」
「ははっ、やっぱ大刀で辰美捉えるのは難しいな」
「抜刀術に大型武器で対峙しようなんて、無茶だよ普通は」
「そうかい? そんじゃま……」
大刀を1本咥え、空いた手で刀を3本抜いて、それを指で挟むように持つ。
「条件を整えりゃいい訳だ」
「--いつも思う事だけど、よくあんな無茶苦茶な剣の扱い方が出来るよ。ユウさんって」




