Nightmare Dive(2)
「――何も芹やひばりまで来る事はないだろう」
『――朝霧先輩は良い顔しないのはわかるけど、以前弓道場でとてもお世話になったから、心配だよ』
「あたしは……個人的に水鏡怜奈さんに会って、話したい事があるんです」
護衛対象を危険にさらせないと言う事で、宇佐美を後から来た光一に預け、一行は蓮華の案内で水鏡グループ所有居住ビルへ。
――その中で、裕樹はずっと黙っている。
「――大丈夫か、裕樹。複雑な顔してるぞ?」
「――恨まれても仕方がない事は、重々承知しております。ですが、どうかお嬢様の事だけでも、お許し願えませんか? そして、恨むならどうか私に」
「……いや、大丈夫だ。水鏡グループ自体は信用も許す事も出来やしないけど、あのお嬢さんに関してだけはもういい加減ケリをつけたいって、そう思ってたから」
「そうか――見損なわずに済みそうで、安心した」
「――感謝、いたします」
「……」
その会話を聞きながら、ひばりは裕樹をじっと見つめる。
会話が終わると、ひばりは裕樹に駆け寄って、裕樹の腕を取った。
「――裕樹さん」
「ん?」
「あたしは、裕樹さんと水鏡グループに何があったかも知らないし、そもそもあたしは人を恨む気持ちなんてわかりません……だから、何て言えばいいのかなんて、わかりませんけど」
「大丈夫だよ――ひばりが危惧したり心配する様な事なんて、何もないさ」
「――その言葉、信じますからね」
「――話に戻るが、本当なのか? 東城達が、居住ビルを占拠しただなんて」
「はい……水鏡SPは悉くが椎名九十九に重傷を負わされ、私も鮫島剛に」
『でも、一体どうして……?』
「……今からする話は、他言無用でお願いできますか?」
「おいおい、居住ビルを占拠されたのは良いのか?」
「彼らの襲撃は正面から堂々となので、隠すどころか既に……」
龍星と芹香は数秒間思考が止まり、互いの顔を見合わせて……
「――マジなのか?」
「はい。居住ビルは今や外は野次馬、中は野戦病院と言う有様で……お嬢様も身柄を抑えられてしまって」
『でもそれなら、態々遺恨のある朝霧先輩じゃなくても、生徒会に援助を呼びかけた方が確実ではないですか?』
「いえ、首謀者――東城太助からの指示なのです。朝霧裕樹を連れて来いと」
「太助が? ……どういうつもりだあいつ?」
――所変わって
「流石は水鏡怜奈。実際見るのは初めてだが、誰もが1度は恋をするってキャッチフレーズは伊達じゃねえ美人だぜ」
「剛、美術品見てる訳じゃないんだから、じろじろと見ない」
「そう言うお前はさっきから何やってんだよ? ――てか、そろそろ説明してくんねえかな? 一体どういうつもりで、ここを占拠したのか」
「彼女を治療しに来た――とりあえず命に別状はないけど、あんまり時間はかけられないなやっぱり」
「--冷静に診察してるとこ悪いが、ビル占拠してまでやる事か?」
「法律や方便でケガや病気を治せる訳ないだろ--と言うか、人を助けて何が悪い?」
「……すげえ言い分だなおい」
ヴィーッ! ヴィーッ!
「はいもしもし――ああっ、ユキナか。はいはい、了解……おまけつきではあるが、来たってよ」
「じゃあおまけ付きでもいいから、通して」
「……ちゃんと勝算あるんだろうな?」
「なきゃ呼ばないよ」




