Nightmare Dive(1)
「待て榊! 話はまだ終わっていない!」
「お前は少しは人の話を聞く事を覚えろ。そんな言い分呑めない」
「待たんか!!」
生徒会議事堂ビル、生徒総会長執務室にて。
生徒総会長の怒声が響く中を、榊龍星は踵を返して乱暴にドアを閉めて――。
『龍君』
総書記、一条宇宙の秘書をやってる、芹香が出迎えた。
「ああっ、芹? 待ってたのか」
『……ごめんね。総会長も、あれで大変だから』
「芹が謝る事じゃない。まあ、東城の活動で何かと生徒会の汚点が暴かれてる所為で、何かと叩かれてる事は知ってるが……複雑か?」
『――うん』
芹香の電子召喚獣、風丸。
失語症である彼女の声は、電子召喚獣風丸と意識を直結させ、それを介して風丸が代弁する形を取っている。
しかしそれは後付けの追加能力であり、その能力の設計、開発をしたのは東城太助。
今学園都市が、最も危険視している男である
『こうして私が言葉で人と話せるの、東城さんのおかげだから……それに彼のやってる事、どうにも悪い事だと思えないよ』
「――確かに疑問に思うのはわかる。だから一条も、調査を優先させるように言ったんだろう。さて、今日は裕樹の退院する日だ」
『……セクハラ癖、ちょっとは治ってる?』
「――治ると思うか?」
『全然』
――所変わって。
「へっくし!」
「汚い!」
「ああっ、悪い――体すっかり鈍っちまった。鍛え直さんと」
「やみ上がりなんだから無理はしないでくださいね」
「わかってるよ、ひばり。けど宇佐美の仕事滞らせちまったから、その分も働かないと」
「気持ちは嬉しいんだけど、無理して倒れられる方が
「わかってるよ。宇佐美がそのでかい胸と重い体重の様にどっしり構え――」
バチーン!!
「セクハラと禁句で理想形を例えないで!」
「――裕樹さん、女性に胸や体重の事を云うのはセクハラだって、以前言いましたよね?」
「……早速やらかしたか」
『……相変わらずだね』
宇佐美がビンタし激怒して、ひばりが呆れながら説教し、縮こまってる裕樹
そこに丁度やってきた龍星と芹香は、
「ん? よう、ダンナに――久しぶりだな、芹香」
『――お久しぶりです。お変わりないようで、何より(?)です』
「今なんで俺の顔見ての疑問形だった?」
「みたのは間違いなくビンタ痕だ。それで身体は、特に左目は大丈夫なのか? あんだけ派手に出血してたんだから、心配してたんだぞ?」
「日常生活には問題ないし、開いた古傷も塞がってる。身体鈍っちまったから、鍛え直さにゃならんけど」
裕樹は失明している訳ではないが、普段バイクに乗るとき以外ではバンダナか眼帯で、左目を隠している。
今は包帯を巻いて、その上から眼帯を懸けている状態。
「――さて、みなもの所に裕香を迎えにいかないと」
「早く顔出してやれ」
「……そうだな」
「朝霧さん!」
病院から出てすぐ、裕樹に掛けられた声。
そこには、まるでリンチにでもあったかのように、ボロボロにされた蓮華の姿が。
『――!? 蓮華さん!?』
「どうしたんだ一体!?」
「しっかりしてください!」
「――朝霧さん、良かった、今日が退院だったんですね」
芹香と龍星、ひばりが駆けよるも、それよりと裕樹に向かってよろよろと歩を進める。
裕樹も、自分に縋りつく様なよわよわしい蓮華を見て、表情が変わった。
「――図々しい事は、重々承知しています……ですが、どうかお願いします」
「……何があった? お前がここまでやられるだなんて、只事じゃないだろ」
「どうか、私と一緒に来てください……お嬢様を、助けてください!」




