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姉妹みたいな一時を(みなも編 その5)

「……」

 エキシビジョンマッチの負傷と疲労で、裕樹が入院中の時の事。

 裕樹から頼まれて、本日裕香は裕樹の世話から離れてみなもの部屋に。

「……(ぎゅ)」

 入るなりみなもに抱きついた。

「……裕香ちゃん?」

 ――が、みなもは疑問符を浮かべた。

 いつもの裕香の甘えん坊とは違い、とろけた様な声も出さなければ、顔をこすり付けたりもせず、痛い位に抱きつく腕にも力が込められていない。

「――やっぱり、お兄ちゃんの事が心配?」

「ううん……もっと酷いケガしたコトあるし、そもそもエキシビジョンマッチが決まってから、こうなる事覚悟してたから」

「そっ、そっか」

「でも、やっぱりね……こういう時って、無性に好きな人に抱っこして貰いたくなるから、ごめんみなも姉ちゃん。今日はちょっと歯止めきかないかも」

「――良いよ。私も裕香ちゃんを抱っこしてあげたい気分だから、ソファに行こう」

「うん」

 一旦離れて貰い、ソファーに座ると裕香を招き寄せ、裕香が肩に顔を埋める様な形で抱きしめてやる。

「……ねえ、みなも姉ちゃん」

「何? 裕香ちゃん」

「私ね、人のあったかさって大好きなんだよ。だから、今でもユウ兄ちゃんに抱っこして貰ってるし、して貰うの好きなんだよ」

 おんぶして貰ってる所は見たことある為、みなもにはその場面が鮮明に想像出来た。

「――こういう時に言う事じゃないかもしれないけど、裕香ちゃんももう年頃なんだから、幾らお兄さん相手でも男の人に抱っこをせがむのはどうかと思うよ?」

「心配しなくても、ユウ兄ちゃん以外に抱っことかおんぶなんて、して欲しくないよ」

「……そう言えば以前、榊さんが裕樹先輩に裕香ちゃんのおんぶ代わろうって言ったら、嫌がってたね。裕香ちゃん、男の子に人気ありそうなのに」

「私のタイプは、ユウ兄ちゃんみたいに強くて賢くて頼れて、包容力のある人が良い」

「――包容力はかなり疑問だけど、強くて賢くて頼れるはハードル高過ぎだよ」

「――言ってみただけだよ。ユウ兄ちゃんが特異な才能を持って生まれたなんて、私が誰よりもよく知って……ふぁあ」

「――なんだか、私も眠くなってきちゃった。ベッド行こうか?」

「うん……寝てる時も、ぎゅってして欲しいな」

「良いよ」


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