兵どもが夢のあと
「――ホント呆れた。花柳先輩から聞いたけど、ユウが一番酷い負傷だったって」
「え? ……そうなの?」
「そうなのじゃありません! 相手が相手だから、負傷自体は仕方がないかもしれないけど、最後のあれはなんですか?」
体育祭の次の日、裕樹は安静を言いわたされ結局入院する事に。
裕樹は宇佐美に呆れられ、ひばりに説教されていた。
「幾ら相手の勢いを利用するためとはいえ、あんな攻撃を前に無防備だなんて。命中した時、どれだけ心配したと思ってるんです?」
「無防備の方が深く入るんだよ。だから相手の次の動作が遅れるし、その深く入った分の勢いも利用できて――」
「……ええ、そうですね。確かにそれを決定打に、エキシビジョンマッチは見事に勝利で飾りました」
余談だが、この4人がやり合った事こそ何十回とあるが、勝敗を決した事は片手の指で数えられる程しかない。
「確かに、ああ言う勝負の事のわからない――特にあたしが、言って良い事じゃないのはわかります。でも裕樹さんも、あたしがあんなの見せられて黙る訳にはいかない事位、わかりますよね?」
「――悪かったよ」
「――でーきた」
そんな会話の横で、裕香はリンゴをむいていた。
そして、紙皿に向いたリンゴを乗せて、つまようじを突き刺して――。
「――裕香ちゃん、リンゴの皿を持って裕樹さんに跨っちゃダメ。お行儀が悪いよ」
「こうした方が食べさせやすいの。だってユウ兄ちゃん、ケガだけで入院してる訳じゃないから」
「ああ……ここにかつぎ込まれてからさっきまで、ずっと寝てた」
「……しばらく出歩くのは無理そうね」
そう言うと、付添いの椅子に腰かけた。
「宇佐美?」
「しばらくユウの世話する事にしたわ。贅沢なのわかってるけど、ユウが動けないんじゃ安心して仕事出来ないよ」
「一緒に看病してくれるの? ありがと、宇佐美姉ちゃん♪」
「――じゃああたしも、何か栄養のある物を作ってきますね? 裕樹さん、病院食じゃ全然足りないでしょう?」
「――まあな」
「――あらあら、両手に花とはユウも隅に置けないんだから」
「あの、花柳さん? なにしてらっしゃるんですか?」
「往診に来たんだけど、入りづらいから待ってるのよ」
「――入りづらいと言うより、楽しんでますよね?」
「はいはい――それと宇佐美ちゃんの事、くれぐれもリークしたりしない様にね?」
「冗談はやめてくださいよ。朝霧さんや一条総書記を敵にしたくありません」




