体育祭シーズン 王者の祝祭(エピローグ)
エキシビジョンマッチ終了。
接戦は予想されていた為、終了したと同時に配備されていた救急医療班が、待ってましたと言わんばかりに駆け付け、あっと言う間に参加者を運んで行った。
一応4人が運び込まれたのは、控室が設置されてる生徒会所有のビルの一室。
「ユウ兄ちゃん!」
「ユウ、大丈夫!?」
「裕樹さん!」
運び込まれたと同時に、控室の中継で試合を観戦していた宇佐美、裕香、ひばりの三人は裕樹が運び込まれた部屋に駆け込んだ。
「はいストップ。心配なのはわかるけど、仮設置とはいえ病室なんだから静かにね?」
4人の医療班の班長に抜擢されたのは、医学部首席である月。
処置を終えて着替えていたのか、血塗れの医療用のゴム手袋を
「月姉ちゃん、ユウ兄ちゃんは!?」
「だから、静かにね? 大丈夫、出血は止まって縫合も済んでるから、後は安静にしておくだけよ」
「――良かった」
「それじゃ私は、他の3人の処置もしないといけないから、ここ任せるわね?」
「え? 任せるって――」
「何かあったら、私のD-Phoneに連絡するだけでいいから。それと――」
「月さん、何か企んでません?」
ひばりは直感的に、月が悪戯を思いついた笑みを浮かべたのを察知した。
「企んでるなんて失礼な。軽食用意してあるけど、安静にさせなきゃいけないから食べさせてあげてって、言おうとしただけよ――じゃあね」
「え? 食べさせ……あの、ちょっと!?」
「うん、わかった」
宇佐美とひばりが動揺するのを気付かない裕香が、満面の笑顔で頷いた。
じゃあお願いね、と裕香の頭を撫でて戸をあけ――2人に挑発っぽい投げキッスをして、月はドアを閉めた。
「さて、と……あれ、どうかした? ひばり姉ちゃんに宇佐美姉ちゃん
「……裕香ちゃんに罪も悪気もないのはわかるけど」
「はい……いえ、深く考えるのやめましょう。考えてみたらあの出血ですから」
「そう、だね。それより、早く裕樹さんの所へ」
と話してる間に、裕香は既に裕樹が寝てるベッドの横の椅子に座っていた。
その裕樹はと言うと、左目を中心に顔の左側を覆う様に包帯が巻かれていて、規則的な寝息をたてている
「――ホンットもう。ユウが寝込んだら、一体誰があたしを守ってくれるんだか」
「へえっ、宇佐美ちゃんってそこまで裕樹さんの事信じてるんだ?」
「へ? ――まっ、まあ……色々と失礼な事言われたり、セクハラ発言とか日常的にされてますけど、仕事自体はきっちりやってくれたり、気を使ってくれてるから……もうユウなしでの仕事は考えられないです」
「――そっか」
「支倉先輩も――最近随分と、ユウに対しての雰囲気変わったと言うか……」
「――ちょっと、色々とあっただけだよ。あたしもね、裕樹さんについては宇佐美ちゃんと同じで……信じてるから」
「…………(じー)」
「――あの、裕香ちゃん?」
「――えっと、何してるの?」
「もしかして、どっちかが私のお姉ちゃんになってくれるのかなって」
『ふぇっ!!?』
「んっ、んんっ……? なんだ? どういう状況だこれ?」




