体育祭シーズン 王者の祝祭(1)
「……なんなの、これ?」
大歓声の中で始まった、学園都市最高峰の大勝負
――否、始まった筈の大勝負は、しんと静まる中で繰り広げられていて、始まって5分してのつぐみの呟きが最初の声。
裕樹と王牙は、絶え間なく動いていた。
激しい剣戟を繰り広げ、距離を取って並ぶ様に駆けだし、駆けながらの剣戟に、打撃の応酬の後にまた距離を取り――。
今度は王牙が拳を握りしめ、裕樹が身体を回して蹴りを繰り出し、脚と拳の激突。
その次の瞬間、裕樹が手の大刀を地面に突き立て、それを軸にして王牙の顔面にもう片方の足を突きだす。
その脚を王牙は掴み、力尽くで支柱にしてる大刀ごと地面から引き抜いて、そのまま脚を抱え込むようにしてブン回す中で、裕樹が身体を捻りその勢いに合わせる様に地面を歩く様に手をついて、もう掴まれていない片方の足で王牙の胸部をけり上げる。
しかし王牙は先ほど同様びくともせず、ブン回す勢いのまま裕樹を引っ張り上げて胸倉をつかみ、裕樹を下敷きにする様に巻きこむ形で倒れ込むように投げ、裕樹が圧迫された。
それで終わりではなく、そのまま裕樹をマウントポジションにとろうとし、裕樹は王牙の腕を咄嗟に掴み、顔面をける様な形で強引に腕ひしぎ十字固めに――
入るかと言うその前に力尽くで引き剥がされ、その引き剥がした腕で裕樹に裏拳を叩き込もうとするのを、裕樹は身体を後転させて避け――
「カグツチ!!」
「――! ブラスト!!」
ガシィッ!!
裕樹がカグツチを呼び出し、王牙もそれに続く様にブラストを呼び出す。
その次の瞬間、溶岩竜と熱血牛人の拳がぶつかった。
『グルルっ……グガアアアアッ!!』
『ブルルッ……モォオオオオッ!!』
ブラストが角を突き立てる様に突進し、カグツチがそれを受け止め、口内に炎をとどめたままブラストの肩に噛みついた。
『ブモオォオオオ!!』
ブラストが苦痛の悲鳴を上げると同時に、互いの電子召喚獣の頭の上に立っていた2人が駆けだし、電子召喚獣の身体を伝い駆けだし、剣と斧の鍔迫り合い。
『モオオオオッ!!』
ブラストが咆哮を上げ、カグツチにボディブローで突き上げる様に持ちあげると、そこで裕樹と王牙が距離を取り、互いの電子召喚獣の頭の上に戻っていく。
「カグツチ!」
『ゴギャアアアアっ!!』
カグツチが咆哮を上げ、ブラストの顔面に炎を吐きそれに続く様にパンチを繰り出す。
炎もパンチも顔面に命中し、そこで2体は距離を取った所で漸く動きがとまり、数拍おいて会場全体から息を吐き出す大合唱が響く。
「――やっぱすげえな」
「――興奮を通り越し、声も出せないとは……まさに、王者の祝祭だ」
「……相変わらず、すごいをあっさりと通り越してくれるわね。2人して」
光一、龍星、クリスがそれぞれの感想を言い合う。
ちなみに、他は皆呆気に取られ何が起こったかさえ理解出来ない様子で、カグツチとブラストのにらみ合いを見ていた。




