学園都市体育祭シーズン開催(5)
『優勝は、久遠光一選手です!』
「……何とか、面目躍如ってところか」
射撃ブースにおいて、光一が参加したラピッドファイアピストル。
光一は見事優勝を勝ち取った。
「おめでとう、光一君!」
「――ああっ、サンキュ」
「? どうかしたんれしゅか? 嬉しくないの?」
「嬉しいよ――ただ、気が抜けただけだから」
競技中は気を張り詰め通しで、余裕などなかった――と言うのが光一の感想だった。
接戦ばかりで、本当にどうにか突破したと言う手ごたえをかみしめる様に、ギリっと拳を握り締める。
「さて、次はクレー射撃――の前に、休憩と行くか」
「お茶と軽食なら用意してありましゅ」
「じゃあちょっと付き合ってよ」
――所変わって。
『優勝は、黛蓮華選手です!』
「――ダメか」
競技は連続氷柱割り。
DIEシステムで具現化した氷塊の柱を、時間内にどれだけ多く砕けるか。
龍星と蓮華の接戦となったが、勝者はスピードで勝る蓮華が勝ちとった
「パワーだけでこの競技は難しいですよ?」
「――そりゃ蓮華は、万能型だからな。俺でも勝てるかどうか」
蓮華は電子ツールのメイスを使った、杖術を得意とする。
その杖術とジークンドーを組み合わせた、パワーとスピードを両立させた戦闘スタイルによって、蓮華は上流階級SPでも群を抜いた実力者と言われている。
「――やっぱり蓮華様、素敵」
「そこらの男なんか、眼じゃない凛々しさだわ」
「相変わらず、女にもてるな」
「――私にその趣味はありません」
髪こそ、背中まで伸びた三つ編みにしている物の、蓮華は普段から執事服を始めとし、普段から男物の服を好んで着ている、言うなれば“男装の麗人”。
主に女性からの人気が高く、彼女に憧れ水鏡グループSPを目指す女性も多いとか。
「それじゃ俺はこれで――責めて1つ位優勝取らんと、年上の面目がつぶれる」
「年上の面目でとれるほど、この体育祭の競技は甘い物では――ああっ、行ってしまった。さて、私も他人の心配をしている場合ではないか……次は」
1競技に優勝した所で、次の競技であっさり脱落。
この体育祭では、良くある事柄である。
――所変わって。
「――あーっ、ダメだ。優勝争いのゆの字すら見えねえ」
「……まだまだ僕達も未熟者かあ」
DIEシステムにより具現した、特設アスレチック(トラップつき)競技。
綾香と鷹久は、優勝争いに参加する事無く、脱落していた。
「――ちっくしょおっ。あそこの踏み込みが甘かったのが不味かったな」
「僕も、あのトラップで反応が遅れちゃったから」
「――まあいいや。タカ、次行こうぜ次!」
「立ち直り早いね」
「まあ、あたし達じゃ競技の優勝は無理みてえだし、もうこうなったら競技を勝つんじゃなくて楽しもうぜ。勿論――」
「ぬおおりゃあああああああああっ!!」
綾香の視線の先で、名取雄太が雄たけびをあげながらの必死の形相で、特設アスレチックに果敢に挑んでいた。
「あんな風に、真剣にな」
「流石に熱血機動隊程、真剣にって言葉が似合う集団も居ないか――うん、そうだね」
「次はどうする?」
「次は僕の競技だよ」
「じゃああたしは応援だな。気合入れろよ?」
「綾香が応援してくれるんなら、気合なんて意識しなくても入るよ」
「「「ちっ!」」」
周囲から舌打ちが響いた。
『優勝は、北丘武瑠選手です!』
「……こんな必死になったのは、凪殿との戦闘訓練以外では久しぶりだ」
余談だが、四神の少女達も全員が参加しており、アスレチック競技優勝は、北丘武瑠が勝ち取った。




