ひばりの終わりと始まり(エピローグ)
今回で、ひばりんの誕生日話はおしまいです
ホントは、日付が変わる前に堕したかったんですが……展開を何度も悩んだ上に書き直したもので。
さて、今回で裕樹とひばりのカップリング成立を目指し、がんばってきたつもりです。
みなさんが楽しめる内容だったかどうか、不安な所
「――ふぅっ」
ケーキも食べ、ご馳走にも舌鼓を打ち――
満ち足りた気分で、ひばりはソファーに腰掛けて先ほど撮った画像を眺める。
「――良い絵だろ?」
その後ろから、片付けをしていた裕樹がひばりに話しかける。
「はい。今日は、ありがとうございました」
「良いよ、そもそも俺達が勝手にやった事だから」
「それでも、ありがとうございます」
「隣良いかな?」
「どうぞ」
了承を貰うと、裕樹は缶のコーラを手にひばりの隣に腰掛け――
それに続く様に、裕香が裕樹に身を預ける様な形で座り、裕樹も裕香の身体に手をまわして、軽く抱きしめてやる。
「――裕香ちゃん、もう10歳でしょ? 幾ら兄弟だからって」
「甘えん坊に年なんて関係ありませーん♪」
「……裕樹さんも」
「良いよ別に。反抗期に入ったら、こうもいかないだろうから」
裕香の反抗期を想像できないと言うか、ひばり自身反抗期の経験がない為、想像は出来なかった。
「――裕樹さんも大概、裕香ちゃんには甘いですね」
「普段しっかりしてる分の反動だと思えば、甘える時位はとことん我儘で良いよ。さて……」
裕樹は傍らに置いておいた紙袋――それも3つを手にとって、1つずつまずはひばりに、そして次に裕香に手渡す。
「プレゼント。折角だから、3人でつけられる物にしようって――まあ、女の子に送る物じゃないかもしれないけど、開けてみてよ」
「えっと……バンダナ、ですか?」
「リボン代わりに使って貰えたらなってね」
「ねえひばり姉ちゃん、結んでよ♪」
裕樹が深紅色のバンダナを左目の古傷を隠す様に巻いて、裕香が今日は三つ編みにしてる背中までの髪を解いて、空色のバンダナをひばりに差し出してせがむ。
ひばりは微笑んでバンダナを受け取って、裕香の髪を纏めポニーテールにしてやる。
「ん、ありがと。次はひばり姉ちゃんね♪」
「うん、お願い」
裕香がひばりから、白のバンダナ――柄は3つとも同じ物を受け取って、ひばりの髪を結んでポニーにし始める。
「――出来た」
「ありがとう」
「さて、と――次は遊ぼうぜ?」
「私はババ抜きが良い!」
――数時間後
「――楽しかったです」
「そりゃよかった」
裕香は遊び疲れて眠り、もう既に学園都市には夜間移動制限が掛けられる時間となり、制限パスが出来る裕樹がひばりを送り届ける事に。
「あたし、裕樹さんを信じてます」
「? どうしたいきなり?
「――今、すごく不思議な気持ちです」
ひばりは裕樹の前に立って、そう告げた。
「何が?」
「今日――以前のあたしだったらきっと、楽しむ事は出来なかった。寧ろ、手間を掛けてしまった事の罪悪感ばかりだったと思います」
「――そう言えば、そうだな」
「だから、裕樹さんのおかげで、少しずつあたし変われてるって実感がわいてきました」
「ひばりが俺を信じたことで、ひばりが変われたんなら――えっと、嬉しいな。なんか照れ臭いよ」
「裕樹さんも、てれる事があるんですね」
そう微笑ましそうに呟いて、ひばりは裕樹の手にそっと両手を添える。
「ありがとう、ございます――あのまま、お母さんではなく罪だけを見て、自分を責めるだけの生き方を続けてたんじゃ、きっと誰も笑顔にならなかった」
「――お礼を言われる様な事じゃないよ」
「言う事です。だって、信じないと人と繋がる事なんて出来ない、人と繋がらない良い子なんてない――そう気づくきっかけは、間違いなく裕樹さんです。だから――」
「支倉さん、そろそろ時間よ?」
「あっ、はい!」
声を掛けられて、ひばりは意識を現実の方に戻す。
D―Phoneの電源を切る前に――
「――貴方を信じて、生きて行きたいです……裕樹さん」
裕樹に言った言葉を、そっと口ずさんでから電源を切って、頭を切り替え職場へと向かった。




