ひばりの終わりと始まり(その1)
「と言う訳なんで、明日は――」
「わかりました――それにしても、態々直接尋ねなくても」
「いえ、俺貴方の名前も連絡先も知らないので」
「――そう言えば、そうでしたね」
「あれ? 裕樹さん?」
勤務時間の数十分前。
ひばりは自身の上司に当たる人と会話してる裕樹を見つけ、駆け寄った。
「ああっ、ひばり」
「どうしたんですか、珍しい」
「いや……今日美味いコーラが入るって耳にしたんで、入荷はいつかと」
「もうっ、またコーラばっかり飲んでるんですか? ダメですよ、炭酸飲料ばっかりじゃなくて、お茶やスポーツドリンクなんかを……」
「支倉さん、そろそろ時間」
「あっ、そうですね――後にします」
そう言ってひばりは去っていき、裕樹はほっと息を吐く。
「すまない、助かった」
「いえ。それより――最高の日にしてあげてください」
「朝霧裕樹の名にかけて――さて、次は“敦”に連絡しないと。今から扱ってくれるかな?」
「“敦”って、寿司の人気店のあの?」
「そうだけど――食べたいなら、今日のお礼に明日1人前もってきますよ」
「――お礼としてはありがたいを通り越して、寧ろ恐れ多い位です」
――一方その頃。
「成程ね」
「だから、光一兄ちゃんにお願いしたの」
「良いよ。どうせ屋台は趣味みたいなもんだし、朝倉もつぐみ達のサークルの方が楽しいだろうから。さて、猫ケーキね……」
光一の寮の部屋にて。
裕香は猫のプリントエプロンをつけ、光一と一緒に猫ケーキの製作準備に入っていた。
「うん。猫ケーキの試作品だったら、ひばり姉ちゃんもそんな気がねしないって思うから」
「そりゃ違い無いな――で、俺の方で、裕香ちゃんが作れる物考えたんだけど」
そう言って光一は、パソコンを起動して簡単なレシピと完成予想図を展開する。
そこにあるのは……
「ぶち猫ケーキ?」
「そっ。生クリームで猫の絵を描いたり、スポンジを猫の形に着るとかも良いけど、スポンジの上は生クリームを集めに塗って、所々にくぼみを作った上で平らにしてから、生クリーム、チョコレートクリームをくぼみに入れて、ブチ柄を作って――」
「その上に、ホイップで猫の絵をかあ」
「そうっ、これなら裕香ちゃんにもできるだろ?」
「……やっぱ光一兄ちゃんに頼んで良かった。それじゃ早速作ろうよ」
「そうだな」




