ほっこりほのぼの屋台通り
「~♪」
「ご機嫌だね、裕香ちゃん」
「うん。ココアはやっぱり、光一兄ちゃんの淹れてくれたのが1番♪」
「私の淹れたココアは?」
「3番か、4番かな? ユウ兄ちゃんもココア淹れてくれるから」
屋台通りにて。
朝霧裕香は、休憩中のみなもと仲良く話をしながら、光一に淹れて貰ったココアを飲みつつ、ほっこりとご機嫌。
「裕香ちゃんご機嫌ですね」
「ココアが好きだからだろ、裕香ちゃんは」
「先輩が淹れた物が特にお気に入り、なんですよね」
「コーヒー飲めるようになるまでは、ココア飲んでたからね。好みが俺に似てんだな」
光一も、裕香が来た時の為にココアを淹れる準備は整えてあり、忙しい時でなければ姿を見つけ次第作り始める。
ぶっちゃけ光一も、裕香のお気に入りと言うのは悪くないと思っている。
「――この色いいなあ」
そんな話をしてる中、裕香はD-Phoneでメイク系のサイトをチェックし始める。
「――熱心ですね」
「――裕香ちゃんももう自分の夢を思い描いて、踏み出す頃合いになったんだな」
「先輩、年より臭いですよ?」
「そう思わない? だって今でも初めて会った頃の様に人懐っこく――」
「光一兄ちゃん、ココアのおかわりちょうだい」
「何て言って来るくらいだぞ?」
「――そう言われると、納得です」
「? 何の話?」
「いや、こっちの話し――ちょっと待ってな、すぐ作るから」
光一が裕香からマグカップを受け取って、ココアを作り始める中で、歩美は裕香をじっと見つめる。
「? どうかしたの?」
「――頑張ってね。メイクのお勉強」
「うん――でね、今日はちょっと試してみたいメイクがあるから、今からみなも姉ちゃんにしてあげるんだけど、歩美姉ちゃんもどうかな?」
「え? ――いっ、良いよあたしは」
「そんな事言わずに、ね?」
「――軽めにね? 一応、食べ物を扱う訳だから」
「はーい」
「この辺りの話は、流石に女の子の……っと」
アイスココアを淹れ終えた光一に、何かがぼふっと顔面に飛びかかってきた。
こぼさないよう気をつけつつ、光一は顔面に飛びかかってきた何かを引き剥がす。
「あっ、ダメだよルクス。ごめんね」
「いや、まあ……ん?」
カップを裕香に手渡し、光一はルクスをじっと観察。
ある程度見回して、眼を見開いた。
「――? どうかしたの?」
「ちょっとごめん、メイクは中止で。朝倉、悪いけど店番頼むな?」
「え? あの、一体……」
戸惑う歩美を光一はルクスを連れて、休憩スペースに。
D-Phoneと屋台の裏手から取り出した機材を、ルクスを中心にするように並べて、起動させる。
「――ねえ、光一兄ちゃん?」
「……驚いたな。もう変化が現れてる」
「え?」
「――今のレッサー型から、次の段階に移行し始めてるって事。つまりね」
「ルクスも、もうすぐカグツチかシラヒメ……じゃなくて、歩美姉ちゃんのセレネみたいになるって事?」
裕香がルクスから、店番してる歩美の肩に止まってる、小鳥型のセレネに眼を向ける。
「そう……これ位の変化自体は、もっと早い事例はあるけどね。でもこれなら、5年生になる頃にはそうなるよ」
「そっかあ……楽しみだね、ルクス」
「ああっ、待って待って。データ取りたいから、まだそのままで」
「うん、わかった」
光一はルクスと機材を交互に見つつ、記録をし始めた。
「光一君、熱心れしゅね」
「色々とやってるけど、どれも熱心になれる事だから――なんだね」
「そうだよ、だから邪魔しない様にね?」
「はーい――みなも姉ちゃんの邪魔もしないよ」
「ひぇっ!? 裕香ちゃん!?」




