ほのぼのコメディ、略してほのコメ
読書の秋
「と言う訳で、俺は今英語版“ロミオとジュリエット”を読んでるんだけど……」
「「「「似合わない(いません)(よん)」」」」
「……そんな声揃えて言わんでも」
宇佐美、つぐみ、みなも、龍星、クリスの声を揃えての言葉に、裕樹は自覚はあっても若干傷ついた。
「まあ、英語版が普通に読めるなんてすごいけどさ」
「言語学科だからね(実は主席)」
「と言うか、なんでそう言うチョイスなの?」
「いや、授業の課題。俺だって恋愛小説なんて性に合わねえっての」
「それなら納得だけど、ユウはそう言うのしっかり読んだ方が良いよ?」
「余計な……って、なんで全員が頷くんだよ!?」
周囲どころか、視界に入る人間全部が云々と頷いていた。
「ったく……読書の秋だっつーのに、気分削がれるな。そもそも、この物語嫌いなのに」
「ごめんごめん――って、嫌い?」
「恋――とは違うけど、水鏡のお嬢さんとの事を思い出すから」
「怜奈さんの、れしゅか?」
「――そだねい。ユウやんは雇われでも、今や反水鏡グループ派閥の旗頭みたいな物だよん。そう思えばロミオとジュリエットの物語で例えれば、皮肉だねい」」
「……なんだか複雑な上に、気分悪い」
怜奈に憧れる身としては、裕樹との確執にはつぐみはあまり良い感情は持てない。
――が、元々本人たちが関与しない所での確執なため、一概にどちらが悪いと言えないのが難しくしていた。
「でも確かに裕樹さんと怜奈さんって、細かくは違いますけどロミオとジュリエットッて感じですよね」
「細かくどころか前提違うって。確かに、誰もが一度は恋をするってのは頷くけど、俺そもそも水鏡のお嬢さんに恋なんてしてないから……まあ、してりゃ違ったかもしれないけど」
「なんだ? まさか裕樹、お前許されない恋の果ての逃避行、なんて――」
「違う! ――少なくとも、今みたいに確執なんてなかったかもしれない程度だ。別に成り立つなんて微塵も思ってない」
そこで裕樹は言葉を切って、何か思案し始める。
「――でもまあ、確かにつぐみのいう通り、気分悪いのも確かか。あのメス共がうるさいだろうけど、話してみるか」
「……普通にメスとか言わないでくだしゃい。女の子として気分悪いれしゅから」
「それこそ今更だ。あいつ等を女扱いするなんて、それこそ反吐が出る」
「……こういう所に助けられてるあたしが言うのもなんだけど、無理ないとはいえ筋金入りだね」
「助けられてる?」
クリスを除くその場全員が、クビを傾げた。
「はい――実はあたし、何かと凄みを利かせて絡んでくる先輩がいまして、あたしを庇う為に良くユウってその先輩と衝突するんですけど……」
「あーっ、何となく話が見えた――確かにそれは、裕樹ならではだ」
「――確かに、女性絡みではてんで空気読めない上に、度を超えて無神経な裕樹さんなら、その人に強気で出る位やりそうですね」
「そう考えりゅと、宇佐美ちゃんの警護役には裕樹しゃんはこれ以上ない適役れしゅね」
「セクハラさえなければねい」
「――それは言わないでください」
「おーい、そろそろ仕事戻ってくれない?」
「--聞いてなさそうですね」
「……じゃあほっとくか。朝倉、あっち準備中の札かけといて」
「いえ、声かけましょうよ」




