久遠光一、甘味の師に会いに行くのこと
今回は、GAUさんの支倉ひばりです。
誰と絡めるかを、かなり悩みました。
学園都市、食品衛生栄養管理課。
学園都市の食品管理を行う部署で、学園都市に搬入される食品は1度ここを経由し、チェックを受けた後に卸業者へと搬送される。
「はい、お疲れさまです。それでは、シフト交代の時間です」
と言っても、ここで行われるのは鮮度管理とリストと照らし合わせての検品、品物の状態チェック等だが、運ばれてくる量は膨大な為、午前、午後、夜分のシフト制の仕事となっている。
「班長、最近野菜の搬入が増えました?」
「うん。農業科の方で、機械の故障があったみたいで、しばらく野菜は外からに頼る事になりそう」
学園都市にも農業科等の食糧自給施設があるにはあるが、全体をカバーしきれるほどの自給率持っている訳ではない為、外からの搬入は必須である。
「……今週の献立、検討し直した方が良いかな?」
そこで職員として働いている少女、支倉ひばりは本日のカリキュラム兼職務が終了した為、自身の所属班長との会話の後に、帰宅準備に。
「おつかれさん、支倉センセ」
そう言って出迎えたのは、中等部からの付き合いである久遠光一。
高等部からは学科やカリキュラム、職こそ繋がりがなくなった物の、光一が研究の合間の小腹の為に始めた甘味作りを通じ、今でもそれなりの交友を持っている。
「あっ、光一君。屋台は終わったの?」
「おかげさまで、盛況だよ。差しいれ持って来たから、一緒に食べない?」
「ありがと。朝倉さんは?」
「今日は用事があるってさ」
場所は変わって、休憩所のベンチ。
光一が差しだした包みには、プレーンのドーナツが3個詰められていて、それを1つ。
「うん、美味しい」
「これも、支倉大先生のおかげですよ」
「先生はやめてよ。すごく恥ずかしいんだよ」
「教えを乞うた以上、先生だろ。去年のクッキングフェスティバルで上位に食い込んだ訳だし、料理に関しては確かなんだからさ」
クッキングフェスティバル。
学園都市における料理人の祭典で、和洋中等のジャンル問わず、学園都市最高の料理人を決める祭典である。
「――あんな大勢の前で料理なんて、それだけでもすごく緊張したんだよ」
「でもその結果は見事上位に食い込んで、朝倉はひばりを憧れの先輩と見てんだけどね」
「……憧れてくれるのは嬉しいけど、大風呂敷はやめてよ」
「もっと自信持てって。体は小さくても――」
「ちっちゃくないよ!」
「おおっ、立ち直った」
「怒らせたの!」
「悪かったよ。それじゃあお詫びに帰りは送るし、買い物があったら付き合うから」




