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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
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第二ラウンド

 ルクスが黒気を唱えた瞬間、周囲を威圧するように黒い風が巻き起こる。


 ドス黒いオーラに包まれた黒ずんだ帯の束がいくつも伸びていて、敵を早く殺したいのか活発に蠢いている。


 ルクスの全身と黒ずんだ帯の束を覆うオーラは禍々しくドス黒い。


「「「っ!?」」」


 ルクスは今気を最大限に放出しているので、気の感知が下手な者でも感じることが出来る。


 ルクスの気の異常なまでの強大さを肌で感じてしまう。


 これが魔力を持たず気のみを追い求めてきた者の力だと、思い知らされる。


「……へぇ。それがあん時のモンスター襲撃事件で使ったって言う黒気か」


 ゼアスは遠征に出ていた二、三年と違い街の空を覆い尽くす程に伸びてモンスターの群れを薙ぎ払った黒気を実際に見ていた。


「……ああ。黒気の発動条件は色々あるんだけどな。俺のこれはただ、俺が狂気に囚われた時に生まれたモノだ。黒気ってのは所謂全ての気の融合だ。だが、例えば鬼気しか使えないヤツがいるとする。なら鬼気だけで全ての気になるし、闘気が使えれば闘鬼が全ての気の融合になる。だが黒気になるためには足りない。俺は仙気と王気が使えないからそれ以外の全てってことになるんだが、数にすると十三個だ」


「……多いよな。こちとらバカだから覚えるのが難しいんだよ」


「……そう言うなよ。魔力のあるお前らと違って俺はそれしかねえんだからさ。剣技もセフィア先輩に比べたらまだまだだし、勝てたのは気の融合で上回ったことによる身体能力の差だ」


「……二年最強の先輩に勝ててそれだけ言えるってのはエリートの考えだぜ?」


「……かもな。だが俺は一時のエリートなんだよ。俺は十五年で気の境地まで達した。これ以上はあんまり強くなれねえ。けどお前らには魔力も気もある。残り何十年の人生があって、どっちが伸びると思ってんだよ?」


「……」


 ルクスの少し自嘲気味な物言いに、ゼアスも会場中の全員も黙り込んでしまう。


「……ま、今現在で俺に勝てるヤツなんていねえってことだ」


 ルクスは静まり返った会場で肩を竦める。


「……さあ、第二ラウンドといこうじゃねえか、ゼアス。てめえが会長に勝つ気でいる理由、見せてみろよ」


 そこで空気を変えるため、ニヤリと不敵に笑って構えるルクス。


「……いいぜ、ルクス。てめえが俺に勝てねえ理由も、見せてやるよ」


 ゼアスはそれに応える形でニタリと笑い、魔剣を地面に突き立てた。


「? 何の真似だ?」


 ルクスは魔剣から手を放すゼアスに問う。何で魔剣を手放すのか、本気で分からないようだ。


「……言ったろ? 魔剣・グラムは能力を斬る能力があり、所有者の身体能力を上げるが、魔力と気を含む全ての持ってる能力を一時的に消す。ま、剣を持ってなきゃ身体能力と引き換えに元々持ってる方を使えるって訳なんだが」


 ゼアスはニタリと笑ったまま答える。つまり、ゼアスはこれから魔剣の力ではなく、元々持っている能力でルクスと戦おうと言うのだ。


「……かかってこいよ、クソ野郎。俺の本気、見せてやるぜ」


 ゼアスは構えると、ルクスを挑発する。ルクスはゼアスの気を感知して問題ないと判断し、動く。正面から殴りかかったのだ。一歩跳ぶだけでゼアスの目の前に移動出来るルクスは、ゼアスを黒気で、思いっきり殴る。だがゼアスの何でもない拳が、ルクスの腹部に当たっていた。もちろんダメージはない。ルクスの拳を腹部に捻じ込まれるようにして受けレイヴィスの一部を吹き飛ばされたゼアスは呻き声を上げて吹っ飛びフィールドの外壁を結界諸共破壊して埋もれるが、ルクスは少し拳を見て違和感を覚えていた。


「……立てよ、ゼアス。そこまでダメージはねえだろ」


 ルクスはその違和感を払拭するため、ゼアスの様子を見ようとするレフェリーより早く、声をかけた。


「……うるせえなぁ。てめえの身体能力が高すぎてヒール連発でも結構キツいんだよ」


 気の十三個の融合、その渾身の一撃をくらったというのに、ゼアスは瓦礫を掻き分けて起き上がった。


「……お前、何をした? 殴った途端、その直前までにはあった確かな強さが、激減しやがった」


「……はっ。一発でそれを見抜くとはなかなかやるじゃねえか。教えてやるよ、俺の体質をな」


 ルクスが険しい顔で問うとゼアスは笑って腹部を押さえながら立ち上がり、歩く。


「……体質?」


「……ああ。俺が生まれた時から持ってる体質でな。触れたヤツの気や魔力を半減させるって体質だ。つまりてめえは俺に触れた瞬間、気が半分になったって訳だな」


「「「……っ!」」」


「……そうらしいな。自分の気が四分の一になってる。だから俺を挑発して攻撃させ、真正面に拳を置いて二回半減させた訳か」


「……そこまで見抜くかよ。ま、そう言うことだ。四分の一ぐらいの威力ならてめえの一撃でも気絶しねえでいられるってのが目測だったんだが、キツいな」


「……実際耐えられてりゃ意味ねえよ。ってか四分の一に減ったとか俺がキツいっての。一々攻撃してさらに半減されちゃ、こっちの気が持たねえよ」


 ルクスが嘆息して言うと、ゼアスは笑みを深める。


「……それがこっちの狙いなんだからそうなってもらわなくちゃ困るんだよ。ってかさっさと自滅しろ」


「……うるせえ。お前は俺の一撃受けてさっさとくたばれ」


 二人は少し楽しそうに、軽口を叩き合う。


「……じゃあこっからは」


「……どっちが先にくたばるかの勝負だよなぁ!」


 二人は言い合い、笑いながら突っ込んだ。

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