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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
96/163

フィナとアイリア

ルクスの過去が明かされる話を、今日さっき書き終えました


そこから先のストックがないので一気に更新はしませんが、そこまで毎日更新にしたいと思います

 一年GクラスVS一年SSSクラスの試合は三戦目に突入していた。相手の魔力はこっちと違ってかなり限られてるので、相手の作戦が通用するかどうかで勝負が決まってくる。


「始め!」


 フィールドに出たフィナは相変わらずポーッとしていたが、フィナなら負けることはないだろう。


「……アイス・フィールド!」


 相手の女子はすかさずフィールド全体に氷を張る魔法を発動させた。薄い氷なので比較的魔力の消費が少ない。フィナはぴょん、と小さくジャンプしていたので凍らされずに済んだ。


「……っ」


 だが着地した瞬間、つるんと足を滑らせて仰向けに転んだ。……頭を思いっきり打ったので、かなり痛そうだ。


「……」


 だがフィナは「頑張れー」などの声援を背にふるふると震えながらも立ち上がる。だが立ち上がった途端、後ろに体重をかけたのか後頭部を強打する形で転んだ。


「……っ」


 フィナは後頭部を押さえてゴロゴロ転がって痛がる。……若干涙目になっているのがここからでも見えた。


「……ガスト!」


 再び立ち上がろうとするフィナを、魔方陣から放たれた突風が襲う。ゴチン、と痛いくらいに後頭部を再び強打した。……ヤバいな。見事にフィナの弱点を突かれている。


 その後は立ち上がることに成功したフィナを突風で運び、滑らせて壁にぶつけるということを繰り返してフィナに少しずつダメージを与えていく。……器用なことにフィナを途中で転ばせないよう、背中をそよ風で支えていた。


 俺も「頑張れ、フィナ」との声援を送ってはいるが、この状況を打破しない限り負けそうだ。


「……ふえ」


 何度も何度も頭をぶつけて鼻をぶつけて痛めつけられたフィナは、ついに泣きそうになってしまう。


「……氷、邪魔」


 だが八つ当たりをするかのように言って、フィナは倒れた状態から右拳を振り上げ、力を込める。そして氷の張った地面に渾身の一撃を叩き込み、パリィン、とフィールド上全ての氷を一撃で振動を伝わせ割った。


「……っ!」


 相手は驚き焦るが、フィナはやっと普通に立てるようになって立ち上がると、とてとてと俺達のベンチの方に駆け寄ってきた。……ん?


 そしてそのままベンチに戻ってこようとして――ビタン、と理事長の試合中は出られない結界にぶつかり、ずるずると地面に倒れていく。


「……フィナ?」


 試合中にベンチに戻ったら失格なんだぞ、と言おうとしたが、フィナがぷるぷる震えているのを見て思い留まった。


「……むぅ、邪魔!」


 フィナは拗ねたように頬を膨らませると、右拳を思いっきり振り被り、フルパワーの一撃を結界に叩き込み、パリィン、と全てを破壊こそしなかったがフィナが通れるくらいの穴が空いた。


『なっ!? 私の結界を素手で破壊しただと!?』


 会場中が驚いていたが、一番驚いていたのは結界を張った理事長本人だった。思わず身を乗り出して信じられないといった表情をしている。


 だがフィナは驚愕する会場を他所に俺のところに駆け寄ってきてジャンプし、俺にギュッと抱き着いてきた。


「……頭いっぱいごちんしたの。なでなでして?」


 フィナは涙目で俺に上目遣いをし、頭を撫でてくれと要求してくる。


「……よしよし。痛かったな、フィナ」


「……ん」


 俺はあれだけぶつけられておいて傷一つないフィナの頭を不思議に思いながら、優しく撫でてやる。


「…………し、勝者、一年Gクラス!」


 唖然としていたレフェリーだったが、ふと我に返って相手の勝利を宣言した。


「……それより良かったのか、フィナ? 負けちゃったぞ?」


 俺はフィナの頭を撫でながら聞く。


「……ん。だって負けないとルクスが戦えないから」


 フィナは気持ち良さそうにしながらこくん、と頷き、ジッと俺の目を見て言った。それを聞いたアイリアが驚いていたが、俺は密かに納得していた。……そういや、喧嘩も多いけどアイリアとフィナは姉妹みたいに毎日を過ごしてるからな。言外に込められたアイリアが絶対に勝つという絶対的な信頼も頷ける。


「……ええ。私は勝つわ」


 アイリアは言って神槍を手にフィールドに歩いていく。


「始め!」


 相手は黒い杖を持った女子だった。おそらく闇属性で大ダメージを狙う作戦だろう。


「……ルクス。フィナをもっと可愛がってくれないか?」


 いきなり、チェイグがそんなことを提案してきた。……ん? まあフィナを可愛がるくらいなら別にいいが。


「……よしよし、いい子だな、フィナは」


「……ん」


 俺はフィナに笑いかけながら頭を撫でる。……これじゃさっきとあんまり変わらないか。


「……フィナはちゃんと先まで見通せるいい子だ」


 俺はそう言いながらフィナの柔らかいプニプニの頬に頬擦りする。


「……何やってるのよ」


 すると聞こえていたのか青筋を額に浮かべたアイリアがこっちを振り向いてきた。……怖いぞ、チェイグ。だがチェイグはその調子だ、と小さく囁いてくる。


「……頑張れよー」


 俺は特に何も思いつかず、フィナをフィールドの方に向かせてフィナの腕を掴み、フィナの手を振ってエールを送る。


「……っ!」


 ……まるでゴゴゴゴ……という怒りのオーラが見えるくらいに怒りを露わにするアイリア。


 ……アイリアさーん。試合中だぞー。


 そんな俺の声が届くハズもなく、アイリアは怒りの表情のまま、叫んだ。


「……グングニル!」


 アイリアが手に持っていた神槍が魔槍に変わり、ベンチの壁に立てかけていた魔槍が神槍に変わる。


「……私の試合中だっていうのにフィナとイチャイチャして……!」


 ……イチャイチャはしてないぞ? これは全てチェイグに言われてやったことで。


「……ルクスの、バカーーーーーーーーー!!!」


 アイリアは叫び、魔槍から黒いオーラを迸らせる。……こ、怖いぞチェイグ。試合終わってから殺されないかな、俺。


 黒いオーラはアイリアの全身を包み、漆黒の甲冑を召喚していく。これは、魔装・グングニルか? まさかチェイグはこれを狙って俺に? ってか何で俺? それならチェイグがイチャイチャしてても良かったじゃん。サリスのいないところでアリエス教師と。


「……」


 ギロッ! と怖いくらいにアイリアは睨んでくるが、すぐに怯える相手に向き直り、魔槍を横薙ぎに振るう。切っ先から漆黒の波動が放たれ、相手は一撃で意識を失った。……強いな。威力だけなら神槍より高いんじゃないだろうか。そしてそんなアイリアがつかつかとこっちに向かってきている俺はどうしたらいいのか。


「勝者、一年SSSクラス!」


 レフェリーはすぐに宣言する。アイリアは魔装を解かないままベンチに戻ってくると、俺を冷たい目で見下ろしてきた。……こ、ここは何とかしてアイリアを褒めなければ。誤魔化さなければ。俺の命が危ない。


「……さ、さすがだな、アイリア。まさかここで魔装を展開するなんて思ってもみなかったぞ」


 俺はアイリアに引き攣った笑みを浮かべて褒める。その間フィナの両腕を持ってあっちこっちに動かしていたのは、焦ってたからだ。


「「……」」


 俺が気まずく視線を逸らし、アイリアがギロリと俺を見下ろす。ほんの数秒だったが、やけに長く感じられた。


「……はぁ。まあいいわ。確かに魔装を展開出来たのはルクスのおかげでもあるんだし」


 アイリアは大きくため息をついて魔槍を下ろし、魔装を解除してくれる。……あ、危なかったぁ。


「……その代わり、負けたら許さないから」


 だがアイリアは後列のベンチに向かう直前、怖いくらいににっこりと笑みを浮かべた。……これは負けられないな。


『これで、決勝で最強生徒会と戦うクラスが決定します! 果たして生き残るのはどちらの問題児なのか!』


 実況がフィナを下ろしてフィールドに歩く俺と、魔剣を肩に担いでフィールドに歩くゼアスについて盛り上げの言葉を発する。……いやいや、生き残るとか問題児とか、俺じゃなくてあっちに適用する言葉だから。


 と思わないでもなかった。

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