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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
95/163

一年生対決

ストックが少なくなってきたので更新を緩めるかもしれません

「これより一年Gクラス対一年SSSクラスの試合を始める! 礼!」


 異色の一年生対決となった準決勝第二試合。俺達は互いに睨み合いながら礼を交わす。


「……はっ。二年最強だなんだと言われてようが、瞬殺だったじゃねえか」


 何事もなく戻っていくかと思われたが、ゼアスが俺を挑発してきた。……ああ?


「……はっ。じゃあ今から俺に負けるお前はもっと早く倒されるだろうな」


 俺まで回ってくるか分からねえが、と俺は挑発し返して振り返る。


「「……」」


 そして互いに睨み合う俺とゼアス。


「……ほら、行くわよ」


 だが俺がアイリアに引っ張られたことによって睨み合いは終わり、互いにベンチに戻る。


「……そういや、シア先輩ってどう負けたんだ?」


 俺は苛立ちを隠そうともせずベンチにドカッと座り、チェイグに聞く。


「……ああ、ルクスは見逃したんだったな。スフェイシア先輩はまず、開始早々に虹色の魔導を発動させて数万の魔方陣を一気に展開した。無詠唱なんだから会場はかなり驚いたな」


 チェイグは真剣な表情で説明してくれる。……無詠唱で数万の魔法って。どうやればそんなことが出来るんだろうな。だがそれじゃあ何でシア先輩が負けたか、さらに分からない。


「……対する会長は魔法を気の七つ融合の中に装気を混ぜてたから受けて回避し、一気にスフェイシア先輩との距離を詰めるとそのまま渾身の一撃をスフェイシア先輩に叩き込んだ、って訳だ。スフェイシア先輩は魔法タイプだから近接に弱い。それを狙ってのことだろうが、放った魔法の中には近接が苦手だってことを補って余りあるくらいの魔法もあった。だが防ぎ、回避してスフェイシア先輩に一撃を叩き込んで、全身をズタズタに引き裂いたんだ」


 ……気の七つ融合だと? まさか、やってみたら出来たとか言う気じゃねえだろうな。だが七つじゃ数万の魔法を全て受けてかわすことは出来ないんじゃないだろうか。


「……生徒会長の使った気には、王気があったんだ。だからスフェイシア先輩の魔法が防がれ、回避された」


 ……王気、だと? じゃああいつは王族なのか? いや、そんな噂は聞いたことがない。小国の王族で、ディルファ王国に吸収されたとかだろうか。


「……なるほどな。つまり、手加減出来たのにしなかったのは明白って訳だな」


 俺はギリッと歯軋りする。……俺が観てても何が出来た訳じゃないだろうが、悔やまれる。


「……落ち着け。今は目の前の試合に集中だ」


 チェイグが俺に落ち着くよう言ってくる。


「……ああ、分かってる」


 俺は言って、フィールドを見る。こっちの一番手はオリガだ。久々の試合だからか、気合いが入っている。


「始め!」


「いくぜ!」


 レフェリーの開始の合図があってすぐ、オリガは突っ込んでいく。……オリガを倒すなら序盤がチャンスだ。どうやって倒そうとするのか。


「……ジェット・スパーク!」


 相手の女子は珍しい混合魔法を放つ。風と雷の系統が合わさった魔法だ。魔方陣が展開され、オリガに向けて強力な竜巻が襲いかかる。


「……ぐっ」


 全開じゃないオリガは竜巻に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。そこでオリガを一筋の電気が走った。……電気ショックか。考えたな。


「……」


 してやられた訳だが、俺は感心してしまった。オリガは気絶してバタリと地面に倒れる。竜巻で壁に叩きつけ、電気ショックで相手の意識を奪う。オリガ以外のヤツなら装気や魔法で耐えたり魔力も気も使わないエンアラ先輩なら素で耐えられるだろうが、スロースターターのオリガでは電気ショックに耐えられなかったようだ。


「勝者、一年Gクラス!」


 結果は向こうの勝ち。……オリガ、ホントにいいとこないよな。オリガは医療メンバー二人に引き摺られてベンチに戻ってくる。


 ……だが相手も賭けだったハズだ。相手の女子の魔力はもう切れかかっていて、オリガがもし耐えていたら負けてただろう。混合魔法って結構魔力の消費が多いからな。


 相手ベンチは歓喜に包まれていた。勝利を心から喜んでいるようだ。


「始め!」


 次はリーフィスと男子だった。今回は魔力を抑えているのかフィナが寒そうにしていない。


「……凍りなさい」


 リーフィスは開始早々右手を前に突き出してフィールドを凍らせていく。


「……ヒートアーマー! ブラッド・ヒート! ボルケーノ・ウェーブ!」


 だが相手は熱を纏い、血の熱を上昇させ、溶岩の波を放ってリーフィスの氷を防いだ。


「……」


「……あんたの氷の能力は、俺には効かないぜ。あんたが魔法も使わずに相手を凍らせるのは、血液を凍らせてるからなんだろ?」


 リーフィスが眉を顰めるのに対し、相手はニヤリと笑って聞いた。どうやら確信があるらしい。……確かにそれで説明はつくんだが。


「……効かないかどうか、試してみる?」


 リーフィスは言うと無詠唱で魔方陣を展開し、氷をどんどん放つ。だが相手に当たる直前で熱に融かされてしまい、当たらない。


「……だから言ったろ?」


 相手はそう言ってニヤリと笑い、近接が苦手なリーフィスに突っ込んでいく。


「……じゃあこれはどうかしら?」


 リーフィスはしかしフッと余裕そうに微笑むと、


「……コキュートス」


 ある氷系統の魔法を使った。……おいおい。それって滅茶苦茶ヤバい魔法じゃん。


 対魔法の勉強をしまくってた俺でも、魔法に疎いヤツでも知っている。水色の魔方陣が相手の足元に展開され、パキパキとゆっくり凍らせていく。熱で、融かせない。


「……くっ、ああぁ……っ!」


 相手の表情が苦悶から次第に恐怖へ変わっていく。


「……」


 そして、相手は完全に凍りついた。


「……し、勝者、一年SSSクラス!」


 レフェリーは呆然としていたが、すぐに決着を宣言する。レフェリーともなればこの魔法を知ってるのは当然だからだ。


「……」


 リーフィスは宣言があってから魔法を解除して、相手を出してやる。


「……さすがだな」


 俺は苦笑して言った。アリエス教師も目を見開いて驚く程、コキュートスという魔法は珍しく、そして恐ろしい。


 コキュートスの氷が何故融けなかったのかについてだが、コキュートスの性質に関係してくる。コキュートスとは裏切り者を永遠に凍らせて閉じ込めておく牢獄だ。それを魔法にしたのだから、当然強い。その性質は熱で融けない、破壊されない、永久にその効果が継続するという出鱈目なモノだ。だからこそリーフィスが勝った訳なんだが。


「……」


 リーフィスはぷいっとそっぽを向いて俺が座る前列ではなく、後列のベンチに座った。

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