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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
94/163

敵討ち

二日連続更新です

「……ふぅ」


 俺は何とか間に合って、男子トイレの中ホッと息を吐いてすっきりしていた。


「……やっぱり三本も飲むべきじゃなかったか」


 俺はチェイグの言う通りにしていれば、と少し後悔していた。シア先輩はさっき観たアンナ先輩よりも強いらしいので、いくら生徒会長といえど瞬殺なんて真似が出来る訳ないだろう。


 そう高を括っていた。


「「「わあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」


 だが一際大きな歓声が響き、観客席から遠いトイレにいても歓声による揺れを感じるぐらいだった。……何だ? まさかもう勝負が? いやいや、チェイグだって言ってたじゃないか。強い者同士なら多分長くなるって。少なくともトイレ行くぐらいの時間はあるって。


『これは、これは誰もが予想だにしなかった事態が起こりました! なんと、なんと瞬殺です! 二年最強のスフェイシアさんを瞬殺! 圧倒的! 圧倒的実力を誇っています、生徒会長リーグ君! やはり最強はこの人なのか!?』


 拡声魔法で実況が言ってくれたので、分かった。……シア先輩が、瞬殺だと? 結局俺はシア先輩の本気を見られなかったってことなのか? いや、そこじゃない。二年最強と三年最強が戦うってことでシア先輩には期待が多かったハズだ。だがそれでも生徒会長には勝てないのか?


「……」


 俺はすっきりし終えると、すぐに駆けてベンチへ続く入り口の近くに向かった。


「っ……!」


 俺は担架に乗せられて運ばれているシア先輩を見て、息を呑んだ。


 レイヴィスを着ているのにも関わらず、ズタズタに引き裂かれて血塗れだ。シア先輩は気を失っているようで動かない。死んではいないが担架を持って運んでいるセフィア先輩とエンアラ先輩の他に付き添う医療メンバーらしき回復魔法をかけている二人と心配そうにシア先輩を見つめるアンナ先輩も一緒だった。


 ……回復魔法が効いてない? いや、効果が薄いのか。血は流れ続けてシア先輩の体温を奪っていく。


「……る、ルクス?」


 呆然と突っ立っている俺に気付いたセフィア先輩の瞳に期待の色が宿る。……顔が真っ青だ。それ程ヤバい状態ってことか。


「……シアのダメージが魔法で治せないの。何とかならない?」


 アンナ先輩も焦っているようで早口だった。……魔法じゃ効果が薄い、か。


「……ああ、大丈夫だ。俺に任せろ」


 俺は言って担架の近くまで行き、シア先輩の手を握って、活気を発動させてシア先輩の全身を淡い黄緑色のオーラで包む。……活気単体だから治りは遅い。だが魔法よりは確実に治っていっている。おかげでシア先輩と共に来ていたメンバー達もホッとした表情をしてくれた。


「……一つ、聞いてもいいか?」


 俺はシア先輩の手を握り締めながら誰にともなく呟く。


「……シア先輩は何度も立ち上がってこうなったのか、それとも一撃でここまでやられたのか」


 俺は出来るだけ平静な声音で尋ねる。


「……ルクスは見ていなかったのか。シアは一撃で、ここまでやられたのだ」


 セフィア先輩は一瞬戸惑ったような顔をしてから答えてくれる。……なるほどな。まさか一撃でここまでやるとはな。余程強いようだ。だが――


「……ここまでやる必要、あったか?」


 俺は全身から殺気と気を溢れさせる。生徒会長程の強いヤツなら気絶するだけに留めることも出来たハズだ。


「……ルクス?」


 憤っている俺にメンバー全員が驚き畏怖を覚えたようだが、傷が塞がったシア先輩が目覚めたようだ。俺の名前を呼び、俺はそのおかげで溢れさせていた殺気と気を収めることが出来た。


「……シア先輩、大丈夫か?」


 血を流しすぎているので大丈夫じゃないのは分かっていたが、聞いた。


「……大丈夫よ。少し休めば良くなるわ。それよりルクスが治してくれたのね」


 シア先輩は青白い顔で弱々しく微笑む。


「……ああ、ゆっくり休んでくれ」


 俺はシア先輩の頭を撫でて眠りを促す。……今のシア先輩は無理出来ない。休んでてもらうのがいい。


「……ええ」


 シア先輩も分かっているのか目を閉じる。


「……言っただろ? 俺が敵は取るって。だから安心して寝てればいい。起きてる頃にはあのチビのボコボコになった面を拝ませてやるから」


 俺はシア先輩を出来るだけ安心させるようにフッと笑って言う。


「……ふふっ。そうね、楽しみにしてるわ。頑張って、ルクス」


 シア先輩はやっぱり弱々しく微笑んで、一回ギュッと俺の手を強く握ってから、意識を失った。


「……ルクス」


 セフィア先輩が少し不安そうに俺の顔を覗き込んでくる。


「……大丈夫だ。今は会長よりあの問題児とやるかもしれないんだからな。ま、見てろって」


 俺はセフィア先輩に笑いかけ、次の試合が始まるので二年SSSクラスのメンバーが出てきた入り口に向かって歩く。


「……いくぜ、てめえら」


 いつの間にか来ていたクラスメイト達に言って、フィールドへ向かっていった。

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