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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
91/163

戦闘狂VSドS

 準決勝第一試合、二戦目。


 古代兵器ニルヴァーナの部品を装備しているニエナ先輩と鞭を武器に戦う魔法と両立タイプの女子の先輩との対戦だ。


「おっし!」


 ニエナ先輩は拳を胸の前で打ち合わせ、勇ましく構える。


「……フフッ」


 鞭使いの先輩も笑みを浮かべて対峙する。


「……鞭を持ってるリンカナ先輩の得意魔法は吸着魔法なんだが、今までの相手は鞭と攻撃魔法で戦ってきたからな。正直言ってニエナ先輩との相性はいいんじゃないかと思う」


 チェイグがお馴染みになった解説を入れてくれる。……吸着魔法か。また珍しい魔法を使うんだな。吸着魔法ってのはその名の通り、モノを吸着させる魔法だ。使い方の例としてはボール系魔法に使って粘着性を持たせておいて、相手が魔法に攻撃してきたらペッタリとくっつくという訳だ。しかもなかなか取れない。他にも相手が放った魔法を、吸着魔法をかけたモノで吸着させて返すということも出来る。


 確かに高速で放たれるものの飛ぶ魔法を使うニエナ先輩とは相性がいいようにも見えるが。


「……どうだろうな」


 俺は最初の小手調べでリンカナ先輩がどう対処するかで見極めようと思う。


「始め!」


 レフェリーの合図があると同時、拳の前に二枚ずつ魔方陣を展開したニエナ先輩はすぐに拳を振るう。


「……」


 だが軽く振られた鞭の先に紫色の光が纏われていて、見えない爆弾を鞭の先で吸着させた。……なかなかやるな。ほぼタイムラグなしで飛んでくるあれを受け止めるなんて。


「……返すわ」


 面白いという風に笑うニエナ先輩に、リンカナ先輩は鞭を振るって見えない爆弾をニエナ先輩に向けて放つ。


「……はっ」


 ニエナ先輩は笑って拳を振るい、相殺したのか二人の中間の空中で爆発が起こる。


「……なら、これはどうだ! 爆裂連拳!」


 ニエナ先輩は連続で両拳を振るう。


「……フィジカル・バースト」


 リンカナ先輩は身体強化の魔法を使いながら高速で鞭を振るい、一個を吸着させてすぐに放ち一個を相殺。これを数回繰り返して無傷で乗り切る。……さすがに上手いな。それに、鞭がかなり速い。相手を痛めつけて楽しむようなことがなければこれくらいやれるというのは、少し勿体ないくらいだ。


「……いいじゃねえか」


 ニエナ先輩は楽しそうに笑う。……戦闘狂だな。


「……あら、ありがとうございます」


 リンカナ先輩はまだまだ余裕そうなニエナ先輩に対しておどけたように返した。


「……これでもマジで言ってんだぜ? だから、手加減なしだ!」


 ニエナ先輩はそう言って右足の前に三つの魔方陣を展開する。……いよいよ主力武器、ニルヴァーナ(の部品)の登場か。


「……っ!」


 リンカナ先輩は放たれた高密度のエネルギーを見て険しい表情をするが、鞭を振るってそれを丸ごと鞭の先に吸着させるとすぐにニエナ先輩に向かって放った。


「……嘘だろ!?」


 さすがにこれはニエナ先輩も考えてなかったのか、信じられないという表情で自分が放った魔法に呑み込まれていく。


「……チッ。やっぱ強いな」


 ニエナ先輩は後方に数メートル吹き飛んだが、舌打ちしつつも笑みを浮かべて言った。


「……それなら降参してくれるとありがたいんですけど?」


 だがリンカナ先輩はあまりダメージがなさそうなニエナ先輩を見て肩を竦めながらおどけてみせる。


「……はっ。こんないい勝負を、降参なんかで終わらせて堪るかよ!」


 ニエナ先輩は凄惨な笑みを浮かべて言うと、右足から高密度エネルギーを放つ。


「……何度やっても同じですよ」


 リンカナ先輩は再び吸着させて返すが、その先に待っているのは左足から放たれた高密度エネルギー。


 相殺され、そこにニエナ先輩の爆裂拳が炸裂する。


「っ……!」


 高密度エネルギーが目隠しになって爆弾をまともにくらってしまうリンカナ先輩。


「……爆裂、連拳!」


 そこを追撃するニエナ先輩の見えない爆弾達。


「……はっ」


 リンカナ先輩はそれでも見えない爆弾を全て相殺しようとするが、充分に構えていなかったので三発、直撃してしまう。


「……おらぁ!」


 相手の無事を確かめることはせず、ただ攻撃を重ねていくニエナ先輩。高密度エネルギーを右足から放つ。それは鞭の先に吸着させられて返されるが、すぐに左足で相殺する。まだニエナ先輩の追撃は止まらない。爆裂連拳をかなり長くやって一度崩れたら総崩れになってしまうこの攻撃の防御は、リンカナ先輩に連続でかなりのダメージを与える。一方的だった。一撃、一泡吹かせただけで終わってしまいそうだった。


 ……見た感じ、リンカナ先輩の魔法は大きなのがない。それを鞭の技術と吸着魔法で補っているんだろう。


「……おらぁ! どうしたよ――?」


 ニエナ先輩がトドメとばかりに右足から高密度エネルギーを放つが、脚を着いてから異変に気付いた。


「んあ?」


 フィールド全体が紫色の光を纏っていて、ニエナ先輩の両脚は地面に吸着されている状態だ。……かなり魔力を消費する。一発逆転を狙ってのことだろう。


「……はぁ!」


 全身が爆弾で傷だらけのリンカナ先輩がニエナ先輩に突っ込んできていて、振り上げた鞭の先には高密度エネルギーが吸着されていた。


「っ! らぁ!」


 ニエナ先輩はさすがにヤバいと思ったんだろう、爆裂拳をリンカナ先輩に直撃させる。鞭の吸着魔法を使ってしまっているので返せない。


「……っ」


 すでにボロボロな身体にその攻撃が効いたようで、リンカナ先輩は足を止めてしまう。だが声援が受けて一歩踏み出し、倒れる――直前でニエナ先輩に向かって鞭を振るった。


「……くそっ」


 目の前という至近距離で鞭から放たれる高密度エネルギーを見てニエナ先輩は呻くが、もうリンカナ先輩は倒れていて立ち上がる程の力は残っていないだろう。


「……」


 ニエナ先輩は高密度エネルギーをまともにくらいながらも立っていた。だがガクリと膝を折って地面に膝を着く。肩で息をして全身もボロボロ。あと何か一撃を当てれば何とかなるかもしれない。


 そう思ってリンカナ先輩を見るが、ピクリとも動かない。


「……勝者」


 気絶しているようだ。レフェリーは試合終了を宣言する。


「……三年SSSクラス!」


 レフェリーが声高々に宣言して、大歓声が沸き起こる。


「……結構やるじゃねえかよ。見直したぜ」


 ニエナ先輩はそう気絶して医療メンバーに運ばれるリンカナ先輩に言ってから、フラフラとした足取りで自軍のベンチに戻っていく。


「……リンカナ先輩は魔力が多い方じゃなく、吸着魔法以外はかなり乏しかったそうだ。そこから鞭を身に着けて使えない攻撃魔法は相手に使ってもらう戦い方を見つけたそうだ」


 チェイグがそんなことを言って少し悲しそうな顔をする。……チェイグは魔力も気も乏しいからな。どこか共感する部分があったんだろう。


 これで二戦二敗。二年SSSクラスは絶体絶命のピンチを迎えた訳だが。


 正直言ってこのまま終わるなんて思ってなかった。


「……私に任せてくれ」


 次に出てくるのは俺が気の融合を教えてさらに強くなっているだろう、二年三大美女の一人、セフィア先輩だからだ。

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