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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
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形状変化の奥義

本日五話目

「……ぐっ。ど、どういうことだ? 確かにさっきまでは喉元に攻撃すれば消えていたのに……!」


 腹部に貫けるようなダメージを受けた敵は立ち上がりながら高笑いをしたルクスに聞く。その顔には信じられないと書いてあった。


「……簡単だ。俺は確かに実技の授業でこいつを見せた」


 ルクスは高笑いを止めて右手の拳に龍を出現させる。


「……チェイグに弱点を教えて怪我はさせないからと練習にも付き合ってもらった」


 「俺は!?」というシュウの叫び声が聞こえてくるようなことを言いつつ、ルクスはさらに説明を続ける。


「……その弱点ってのが、龍の喉元に攻撃を当てるってことなんだが、それは実際にやってみせたし、実技はクラス単位でやるし合同じゃねえからクラスメイト全員はこの弱点を知ってるってことだよな。もちろんあんたに直接教えたかは知らないが、俺のクラスの誰かが情報を流してることは判明した訳だ。今この場で犯人探しをする、なんてことはしねえが、そいつかそいつらのせいで俺のクラスはあと五人しか代表がいないところまで追い詰められてるって訳だな。ってことで俺はかなり頭に来てるんだが、それは良い。今はこいつの説明をしてやらないとな」


 ルクスは少し早口で、笑いながら言った。……だが怒っているらしく笑顔がかなり怖い。


「弱点が喉元? 拳か木の棒に発動しなきゃいけない? バカを言うなよ! 全部嘘だ!」


「「「っ!?」」」


 ルクスが堂々と言い、会場全体に驚きが走る。


「……あんたの攻撃をわざと受けるのはかなりキツかったけどな。だがま、それ以上の収獲はあったってことで。――鬼龍」


 ルクスは苦笑しつつ、身体から赤と銀のオーラが混ざった鬼のような角が二本生えた龍が敵に向かって突っ込んでいく。


「はっ!」


 敵は今までと同じように龍の喉元を狙うが、


「っ!?」


 剣は寧ろ弾かれて龍の溶岩の咆哮をまともに受けてしまう。


「がっ!」


「……だから言っただろ。諦めな。万一にも俺に勝てる可能性は、ないぜ。剣龍、獣龍、狂龍、闘龍」


 直撃して再び壁に叩きつけられる敵に向けて言いながら、白と銀、茶と銀、桃と銀、青と銀と各種の龍を出現させて放っていく。


「くそっ!」


 敵は呻いて水色の雷を纏い、高速移動でルクスの背後に回り込む。


「……闘鬼」


 ルクスは後ろを振り返らずに五体の龍を消し代わりに青と赤のオーラが混じった巨大な鬼を出現させる。


「はぁ!」


 相手は水色の雷を剣の一振りで放ち、青と赤の鬼の身体を消し飛ばす。


「……おぉ、なかなかやるな。だがそろそろ魔力と気が尽きそうなんだろ? 決着をつけようぜ」


「……臨むところだ」


 ルクスは軽い口調で言い、敵は剣を構え疲労した様子で応える。……こうして見てもルクスは傷だらけだが息切れを起こしていない。圧倒的なスタミナだった。


「……剣龍闘戦狂獣衝錬鬼っ!」


「「「っ!??」」」


 ここに来て、ルクスは気の九つ融合を使った。


 その迫力たるや、戦闘狂のオリガが軽く怯む程だ。実際に対峙している敵にとっては堪らないだろう。


「……折角だから見せてやるか。九頭龍! 鬼神! 魔獣!」


 そう言ってルクスは三体の異形のオーラの怪物を出現させる。


 一体は銀色が一番多く使われているが九色で出来た頭を一つずつ持つ龍。


 一体は赤を主体としている九色の巨大で両手に出刃包丁を持つ鬼。


 一体は角があり九色でも暗い色が多く使われている巨大な四足歩行の獣。


「……な、何だと……?」


 敵はそれら三体を呆然と見上げる。だがルクスは容赦なく三体に敵を攻撃させる。


 九頭龍が九つの首を仰け反らせて口元に気の塊を溜めていき、九つの咆哮を放った。


「……はぁぁ……!」


 だが敵もこれを乗り切れば勝てると思っているため、惜しみなく全力を注ぐ。水色の全属性のモノが敵を覆った。


「……へえ。珍しいな、水色の全属性とは」


 ルクスは感心したように言うが、敵はそれに答えるような余裕がない。九頭竜の放った九つの咆哮に対して水色の全属性で対抗し、押し返す。だがそこには無傷の九頭龍がいて、さらに咆哮を放とうとしてくる。


「くそっ!」


 敵は呻きつつ遠距離では埒が明かないと突っ込む。だがそこには出刃包丁を二本持った巨大な鬼がいる。鬼は巨体の割りに素早い動きで敵の背後に回り込み、強力すぎる一撃を叩きつける。


「ぐっ……!」


 だが敵は間一髪跳躍してそれをかわす。だがその先には魔獣がいて、鋭く巨大な爪で切り裂く。


「がっ!」


 避けられなかった敵は吹き飛ぶ。だがその先にはルクスは待ち受けていて、


「ほらよっ!」


 吹っ飛んでくる敵を掴みその勢いを殺さないままグルリと回転してぶん投げた。


「っ……!」


「……ふぅ」


 ルクスは敵を投げると気の九つ融合を解いて一息つく。だが三体は依然として存在している。


 まず魔獣が咆哮で投げられた敵を攻撃して上空に打ち上げ、消える。


 次に九頭龍が九つの咆哮を敵という一点に集束させて放ち、消える。すでに強化されたとはいえ大ダメージを受けている武装はほぼボロボロだった。


 そこに鬼神が跳躍し、ルクスに向けて右の出刃包丁で敵を攻撃して飛ばし、消える。幸いなのか不幸なのかまだ意識がある敵は何とか状況を打破しようとするが、無駄な足掻きだった。


「……破気」


 ルクスは飛んでくる敵に対して木の棒に灰色のオーラを纏うだけで構え、敵の腹部を軽く打つ。すると限界だったのだろう。武装は完全になくなり、レイヴィスは上半身が消し飛んだ。


 勢いを弱めるようなことはしなかったので敵はそのまま地面に突っ込んでいった。


「……勝者、一年SSSクラス! よって三勝二敗で一年SSSクラスの勝利とする!」


 地面に倒れて動かない敵を見たレフェリーが素早く宣言して、三回戦最後の勝者が決定した。


「「「わああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」


 今までの中で圧倒的なパフォーマンスを見せたルクスに会場が揺れんばかりの大歓声が送られる。


 ……だが気の融合を使う者は思っていた。気の九つ融合を使いあれだけ消費したのにも関わらず少し疲労した程度の様子でベンチに戻っていくルクスの異常な気の保有量に。


『圧倒的! 圧倒的です、ルクス! これで三年SSSクラス! 二年SSSクラス! 一年Gクラス! そして、一年SSSクラスの準決勝進出が、決定しましたーっ!』


 実況は興奮しまくりで顔を真っ赤にしながら言った。


 ついに、因縁の対決が始まろうとしていた。

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