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禁気の刃使い  作者: 星長晶人
第三章
84/163

最強の氷使いと頑張り屋

この試合が終わるまで更新しようかと思っています


十話ぐらいストックがあるので毎日更新してもいいんですが、他作品も進めないといけないので適度に更新します


 本日一話目

「……」


 リーフィスがベンチからフィールドの中央へ歩いていく。それに合わせて冷気が放たれ地面に着いた足元が凍てつく。


 まるで、リーフィス自身が冷気を放っているかのような現象だった。


「……おい。勝負は始まってないぜ?」


 リーフィスの冷気に身を震わせる相手はレフェリーに言う。


「……」


 レフェリーもリーフィスの冷気を感じているのか、リーフィスに問うような視線を投げかける。


「……私は何もしてないわ。ただ魔力を表に出しただけよ。私の魔力にあなた達の魔力が恐怖してるだけ。その証拠に、理事長の結界で遮断されてるハズの観客席の人達も寒いと思ってるわ」


 リーフィスはだが淡々と告げる。……確かにリーフィスの言う通り、観客席にいるヤツも震えている。さらに魔力のない俺はさっきまで近くにいたのに全く冷気を感じていない。


「……ルクス、抱っこ」


 フィナがふるふると身を震わせながら言った。……魔人っていう最強の種族であるフィナでさえ寒いのか。それなら戦いの最中にい続けなければならないレフェリーが寒くなるのも頷ける。


 俺はフィナを抱えよしよしと頭を撫でてやる。……こんなんで治るとも思わないが。


「……は、始め!」


 レフェリーもリーフィスの言い分が正しいと思ったのか、開始を告げる。


 その瞬間だった。


 ピキィ……ン。


 と世界が凍りついた。


 ……正確に言えば、今までリーフィスの魔力に恐怖して凍えていた人達が、見た目は変わりないが動かなくなったのだ。


 おそらく今までは抑えていたんだろう。俺には魔力がないからよく分からないが。


『……やってくれるな。勝者はお前でいい』


 理事長は凍りつくことなく平然としていて、ボォとレフェリーを炎で包み覚醒させる。……リーフィスは理事長に一礼してベンチに戻ってくる。


「……ルクス寒い。もっとギュッてする」


 フィナは何とか耐えていたようで、ギュッと俺に抱き着いてくる。俺はフィナの頭を撫でてやった。……ちょっとは恐怖が収まっていたらしい。


「……リーフィス、もうちょっと加減出来ないのか?」


 レフェリーに理事長がリーフィスの勝利を告げて凍ったまま動かない人達を燃やしていき、二戦目も一年SSSクラスの勝利となった。


 ちゃんと相手だけ凍らせておくところは、勝敗の正当性を認めさせるのに充分だった。


「……加減も何も、ただ魔力を表に出しただけよ」


「さすが、“氷の女王”は言うことが違うな」


「……おだてなくていいわよ」


 リーフィスはそう言ってプイッとそっぽを向くが、後列のベンチに座る俺の隣に座った。


「ほらレガート、三戦目が始まるぞ。いってこい」


 俺は凍っていたのでキョトンとしているレガートに言った。


「……えっ? もう僕の番?」


 レガートはキョトンとして言いつつ、俺が頷いたのを見てフィールドへと歩いていく。


「……」


 レガートはレイスと違いガチガチに緊張しているのか、右手と右足が一緒に出ていた。その緊張模様に会場内がクスクス笑いに包まれた。


「……」


 レガートはそれに顔を伏せ気味にして頬を染めた。……失敗をやらかしたおかげで少し緊張がほぐれたようで、レガートはふーっと大きく息を吐くと落ち着いた様子でフィールド中央に向かう。


 相手は神経質そうな男子だ。……身体能力はレガートの方が高い。だが魔法能力はどうだろうな。


「……レガート・リーバン・フィル・ブレード。……影系統と刃系統が得意」


 相手はブツブツと呟いていた。……レガートの情報は相手の手中にある。


「……レガート! シャキッとしろよ!」


 俺はレガートに対し激励する。


「……レガート。その先輩は“薬剤師”と呼ばれ何もない状態から薬を作成する薬剤魔法を得意としてる。危険な薬品も作れるから気を付けた方がいい。あと瓶作成っていう様々な瓶を作り出すモノを得意としているぞ」


 チェイグが初めて相手の情報をレガートに告げる。すると相手はチッと舌打ちした。……意外と短気なのかもしれない。


「始め!」


 互いに相手の情報が割れた状態での試合が始まった。


「……火炎瓶」


「っ!」


 相手はいきなり瓶作成の一つを使って手元に火炎の入った瓶を八つ出現させると、すぐさまレガートに放り投げた。


「……アクアブレード」


 だが緊張が解けたらしいレガートは冷静に水系統魔法を使い魔方陣を展開させると水の刃を放って空中で火炎瓶を切り裂く。ブレード系の刃を放つとは、刃を飛ばすということじゃなく、魔方陣から先端に刃がある縄を伸ばすような感じだ。


 そのため使いこなすには精密なコントロールが必要になる。だがだからこそ、レガートは一つの刃で八つの火炎瓶を切り裂けた訳だが。


「……爆薬」


 おそらく薬剤魔法の一種だろう、爆薬を虚空に描いた魔方陣から取り出してレガートに向けて投げつけてくる。……危険な薬品はまだ使ってないな。上級生だから自重してるのか、それともまだ使い時じゃないからなのか。


 対するレガートはさっき展開したアクアブレードで爆薬を切り裂いた。切り裂かれた爆薬は湿気ったからか、爆発せずに地面に落ちる。……だが消えないな。魔法は使い終わったら消えるモノなんだが。油断出来る相手じゃないかもしれない。


「……っ」


 レガートはそれを視認しながら、今は気にしないようにしたのか無言でゆっくりと魔方陣を展開していく。各属性の魔方陣が展開されているので無言の方が相手に読まれないと見たんだろう。


「……カッター系魔法か」


 しかし魔方陣には決まった形があるので相手はその魔方陣を読み取った。……レガートの情報を知っていればどんな魔法を使うかは分かるだろうしな。直前で頭に入れれば問題ないだろう。


「……っ」


 レガートは魔方陣を読まれて険しい表情をしていたが、すぐに魔法を発動させる。各属性の刃が横向きで無数に飛んでいく。


「……」


 対する相手も無言で魔方陣をいくつも展開すると、そこから出てきた様々な色の瓶を地面に投げつける。相手は体勢を低くして地面から沸き上がる火や水などに身を隠す。


「……シャドウブレード」


 レガートはカッターが防がれたのを見て、厳しい表情をしていたが、すぐに次の手に移る。黒い魔方陣をいくつも展開してそこから刃を伸ばす。レガートが最も得意とする魔法なのでその操作具合は言うまでもない。相手が作り出した壁を切り裂き一本で相手の鳩尾(みぞおち)を狙う。


「……まだまだか。硫酸」


 相手はそれを後ろに跳んで避けながら、虚空から出現させた八つの瓶を手で持って放る。それらはレガートが追撃にと伸ばしていた影の刃が切り裂いたが、影の刃は溶けてボロボロになってしまう。


「……爆薬」


 さらに相手は影の刃をいくつか弱体化させると爆薬をレガートに向けて放る。レガートはもちろんそれも切り裂くが、爆発せずレガートの足元に転がる。


「……ラピッド・ショット」


「……っ!」


 情報にはなかった無数の弾丸を放つ魔法を見てレガートは驚くが、そんなことでは冷静さを失わない。追加でシャドウブレードを展開すると自身の前で高速回転させて弾丸を全て防いだ。


「……爆薬」


 相手はしかし不意打ちに対処したレガートに対して何も反応せずに更なる爆薬を放つ。今度は無数だ。何故かレガートには当たらない範囲にまで放っている。……これだけ分かりやすければレガートも気付いてるだろう。相手は今、おそらくではあるがトドメへの下準備を進めている。レガートの足元に散らばった爆薬がそれだ。


「……」


 レガートもそれは分かってるんだろう、影の刃で自分の範囲に来ない爆薬もわざわざ真っ二つにして転がしておく。どう対処するのかは分からないが、用心するに越したことはないだろう。


「……爆薬」


 しかし相手はそんなレガートに対して再び無数の爆薬を放る。全て瓶に入っているので違うモノが混じっていても分からない。爆薬だと言ってるんだから、そう思って対処するしかない。瓶魔法とか薬剤魔法とか、マイナーな部類の魔法の魔方陣を完璧に覚えてるのは使い手ぐらいのもんだろうと思う。俺もあまり正確に覚えてない。対魔法のために魔方陣を覚えてた時期もあるにはあったんだが、数が多すぎて面倒だ。


「……」


 レガートは無言で影の刃を操り爆薬を切り裂く。……このままじゃ先にレガートの魔力が切れるかもしれないな。早めに攻勢に出た方がいいか。


「……ワールドブレード!」


 レガートも俺と同じことを思ったんだろう、一気に決めるつもりか、全属性の刃を相手の周囲に展開した魔方陣から伸ばして攻撃する魔法を使用する。


「……アクアフロア。爆薬」


 だが相手はそれを防ごうとはせずに、フィールドを水浸しにして更なる爆薬を放ってくる。


「……っ」


 ワールドブレードはレガートがちゃんとコントロールしていたんだろう、相手のレイヴィスに切りつけて攻撃した。全身を(レイヴィス越しだが)ボコボコにされた戦士タイプではない相手はガクッと膝を着く。


 だが爆薬と言われて放り投げられた瓶は水に触れると激しい放電を引き起こした。


「っ!」


 レガートはそれを見て危機感を感じたが、もう遅い。爆薬と言われて転がっている瓶は全て雷撃瓶とかだったのか、雷が水を伝ってフィールドに広がっていき瓶に当たる毎にさらに勢いを増していく。


「……ぐっ!」


 レガートは逃げられずに迫る雷を受けて感電し、ガクッと膝を着いた。……レイヴィスで受け切れる攻撃と、体内にダメージがいく攻撃の違いだろう。レガートの方がダメージが大きいように思える。


「……」


 相手はレイヴィスで受けたがダメージは大きいようで、ヨロヨロと立ち上がる。一方のレガートは相手を睨みつけるもののダメージが大きくて立ち上がれていない。


「……体力回復薬」


 相手はそんなレガートの減った魔力を感知してか、ゆっくりと虚空から作り出した黄緑色をした液体の入った瓶を取り出して飲み、傷を回復させる。


「……激爆薬」


 相手は充分に体力を回復したところでレガートに向けて特大の瓶を放る。


「っ……!」


 感電して麻痺状態になっているのか動けないレガートは目の前に落ちてきた特大の瓶が起こした大爆発を直撃させられた。


「……っ」


 レガートは麻痺が解けたようだが爆発が直撃したため、よろけてしかし立ち上がる。


「……シャドウブレード・キャノン!」


 レガートはボロボロになりながらも両手を前に突き出して黒い魔方陣を展開すると、影の刃が無数に絡まり合い相手に向かって伸びていく。


「っ……!」


 相手はレガートの最後の一撃をまともにくらい、後方の壁まで吹き飛ばされる。それに対してレガートは微笑んだ。


「……くっ」


 相手は何とか立ち上がり、ギロリとレガートを睨みつける。


「……」


 レガートは相手に睨みつけられた先で、微笑んだまま力なく前のめりに倒れていく。


 魔力が切れたか、体力が限界に達したか。


 レガートは力尽きてフィールドで仰向けに倒れた。


「……勝者、二年SSクラス!」


 レフェリーが倒れて動かないレガートを見てそう宣言する。会場はレガートと相手を賞賛する拍手と歓声で包まれる。


 レガートは駆けつけた医療メンバー二人に抱えられ、ベンチに戻ってきて寝かされ、回復を受けていた。


「……じゃあ、いってくるわ」


 次は二勝一敗での登場、アイリアだ。今回相手は正面から戦ってきている。アイリアを正面から倒せるヤツなんていないだろう。

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